2011 Fiscal Year Annual Research Report
「一人称の科学」の基盤作り:理論と実践の循環と体験の言語化を促す質的研究法の開発
Project/Area Number |
21500573
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村川 治彦 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (20527105)
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Keywords | 質的研究法 / 認知意味論 / 身体性 / 言語と体験 / 一人称の科学 |
Research Abstract |
この研究は主体経験の共有化の規範を整理し、インタビュー法と合わせて、「一人称の科学」の方法論として提示していくことを目的としている。本年度は昨年までの活動成果で整理した「一人称の科学」の枠組みを様々な学問領域の課題と接合していくことを中心に活動を行った。 (1)日本宗教学会第70回学術大会におけるパネル「瞑想的世界認識と宗教研究」(企画代表者葛西賢太)にて、意識研究における一人称的アプローチの先駆者の一人であるF.Varelaについて発表した。このパネルでの議論を通じて、欧米の意識研究から生まれた一人称の科学の方法が、20世紀後半以降の宗教研究のあり方とも密接につながっていることが確認された。(2)日本健康心理学会第24回大会において、「スピリチュアリティの個別性とヘルスケアシステム」をテーマに発表した。これまで研究してきた身体経験を意味のある形で言語化し理論と実践を結びつけるという一人称の科学の課題は、健康心理学研究においてスピリチュアリティを扱ううえでも重要であることを指摘した。(3)2012年1月にこの3年間の研究で明らかになった、「一人称の科学」の基盤である体験理解の根本的枠組みの問題を探るため、看護の現象学の第一人者である西村ユミ(大阪大学コミュニケーションデザインセンター准教授)ジェンドリン研究の第一人者である池見陽(関西大学教授)、フッサール研究者でジェンドリン哲学に造詣の深い三村尚彦(関西大学教授)の3人の研究者を招きシンポジウムを行った。西村による基調講演「研究者がフィールドに身をおくことが、インタビューや分析・解釈に不可欠であるのはなぜか?」に続き、池見によるフォーカシングの実践、三村による「ディルタイとジェンドリンにとって「追体験」とは,何をどのように体験することなのか」の報告をきっかけに議論を進め、精神科学における体験理解の諸問題について議論を深めた。 これらの活動により宗教学、健康心理学、看護学、臨床心理学、哲学など多様な領域で「一人称の科学」という枠組みが重要なアプローチであることを明らかにすることができた。
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Research Products
(2 results)