2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小田 伸午 Kyoto University, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (10169310)
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Keywords | 肩甲帯 / 肩甲骨 / 鎖骨 / バイオメカニクス |
Research Abstract |
これまでのバイオメカニクス研究の多くは、上腕セグメントが体幹セグメントに「肩甲上腕関節」を介して接続しているというモデルを用いている。実際の体幹と上腕の間には、鎖骨および肩甲骨からなる肩甲帯というセグメントが存在しており、肩甲帯が機能的に運動することによって、スポーツ動作における巧みな上肢運動を可能にしている。そこで本研究は、肩甲帯特に鎖骨に注目し、上肢挙上時の鎖骨・肩甲骨の関係性、挙上面による運動の違いを明らかにすることを目的とした。健常成人11名を対象に、前額面、肩甲面、矢状面での上肢挙上運動において上肢下垂位から最大挙上位までの鎖骨および肩甲骨(肩甲帯)運動にっいて三次元動作解析を行った。 結果、前額面での挙上(肩外転)では、矢状面のそれに比べて鎖骨挙上・後退角度が上肢挙上初期に有意に大きい値を示した。肩甲骨の上方回旋・後傾角度も有意に大きく、また、前額面挙上90°まで肩甲骨は後退方向へ動いた。矢状面での挙上(肩屈曲)では、挙上初期に鎖骨には動きが生じず、肩甲骨は初期から前方牽引された。また、矢状面での鎖骨・肩甲骨の角度変化は、前額面での上肢挙上よりも遅れて開始され、特に上肢挙上120°までは鎖骨・肩甲骨角度は矢状面の方が前額面よりも小さかった。このことから、上肢挙上中期までの矢状面における肩甲帯(鎖骨・肩甲骨)運動は、他の面でのそれに比べ、角度変化が少ないことから、容易な運動であると示唆された。 本研究結果は、上肢挙上面による肩甲帯運動の違いを上肢下垂位から最大挙上位までの範囲で明らかにしたものであり、特にこれまで注目されることの少なかった鎖骨の動態についても明らかにした。これらの知見は、肩関節疾患患者の治療あるいはスポーツ選手における傷害予防に役立つものであり、リハビリテーションあるいはスポーツ現場における臨床的意義はあると考えられる。
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