Research Abstract |
本研究は,熟練指導者や熟練技能保持者が有する経験知を,経験の浅い指導者に伝達するための経験知獲得支援システム開発の一環として,そのコンテンツ作成を目的に行われた.本年度は,アンケート調査の結果から,複数の熟練指導者の意見が集約される動作(以下,C-node)の同定および指導者の類型化を行うことを目的とした. プロ野球投手10年以上経験者(76名),指導歴20年以上の熟練高校指導者(239名)及び熟練中学野球指導者(115名)のアンケート調査の回答を基に,それぞれの群の回答が「賛成」または「反対」のいずれかに70%以上の意見が集中した場合にC-nodeとみなした.C-node数は,30項目中それぞれ5,5,6で,3群ともに同様のものは,3つだけであった. 類型化の際の変数選択にあたって,5群(プロ投手10年以上,高校指導20年以上,高校指導3年未満,中学指導20年以上,中学指導3年未満)で有意な差があった12項目を分析変数とした.その後,カテゴリカル主成分分析を行い,7次元が得られ,そのオブジェクトスコアを基に,K-means法によるクラスター分析を行った.以下は,各クラスターの特徴概要である:クラスター1:こだわりを持たず,多くのことを投手次第で柔軟に対応する指導者.クラスター2:反動を使った動作を支持する傾向が強い投球速度重視型指導者.クラスター3:自然体で前に出ることを好む,投手育成に自信を持つ指導者.クラスター4:反動を使った動作を嫌い(制球重視型),踵着地を好む指導者.クラスター5:制球重視型で足の内側着地を好む指導者.クラスター6:制球重視型で足裏全体着地を好む指導者.クラスター7:投手板を強く蹴ることを好むが,反動を使った動作を嫌い,それ以外は投手次第で柔軟に対応する指導者.クラスター8:栂指球着地と肘を前に出すことを好む指導者.指導対象の年齢レベルや指導方針によって,指導方法を類型化可能であった.
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