2011 Fiscal Year Annual Research Report
安静立位姿勢制御のフィードバック遅れ時間の推定方法に関する比較研究
Project/Area Number |
21500595
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
藤永 博 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (20238596)
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Keywords | 重心動揺検査 / 足圧中心動揺 / 立位姿勢制御 / フラクタル / ラテラリティ |
Research Abstract |
足圧中心動揺の時系列データから推定されるフィードバック遅れ時間は、安静立位時の自発性姿勢動揺を制御する系の機能的状態の指標として有望と考えられる。本研究の目的は、フィードバック遅れ時間の適切な推定方法を確立し、その解釈および評価の方法・基準等について運動制御理論、統計力学、非線形力学などの視点から、あるいは様々な被検者や動揺測定条件から得られた推定飯の比較をもとに考察することである。 平成23年度は過去2年間の成果と他の研究グループの報告等を踏まえ、本研究の総括を行った。安鹸立位時の足圧中心位門と速度(階差)の時系列は、非整数ガウスノイズと非整数ブラウン運動の境界(1/fゆらぎ)に近い動態を示すことが明らかになった。そのため、足圧中心動揺の分析には、これら二つのタイプの時系列の分析が可能なDetrended Fluctuation Analysis(DFA)が最も適切な分析手法のひとつであると結論づけられた。 足圧中心動揺は健常な成人では1/fのゆらぎに近いが、立ち方、年齢、健康状態、トレーニング、身体の不活動化などの影響により拡散性や相関構造は変化する。こうした変化は、DFAのスケーリング指数α(自己相似パラメータH)、あるいは持続性相関から反持続性相関へ移行するクロスオーバー・ポイントなどに反映されると考えられる。重心点(身体重心の垂直投影点)が安定限界より十分に内側にあるときは、足圧中心の速度の方が動揺制御にとってより重要な意味をもつことが示唆された。 本研究では学童野球の選手、学生、高齢者(太極拳長期実践者と運動習慣のない健常者)を対象に、片脚および両脚立位姿勢で、あるいは下腿筋へのキネシオテープ貼付時に足圧中心動揺の測定を行った。フィードバック遅れ時間はクロスオーバー・ポイントから推定することが可能であることが示唆された。また、加齢や疲労は足圧中心動揺をガウスノイズの方向にシフトさせ、トレーニング(運動習慣)は足圧中心動揺をブラウン運動の方向にシフトさせる傾向が示された。今後、集積した基礎データの分析を進め、この「傾向」を検証する予定である。
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Research Products
(3 results)