2011 Fiscal Year Annual Research Report
健康・スポーツ系民間非営利法人の持続的発展をささえる人的支援策に関する研究
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21500609
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水上 博司 日本大学, 文理学部, 教授 (90242924)
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Keywords | スポーツの公共性 / 民間非営利法人 / 総合型地域スポーツクラブ / 協働性 / 指定管理 / 公共スポーツ施設 / 事業委託 / 政策立案 |
Research Abstract |
三重県いなべ市の「社団法人元気クラブいなべ」における健康増進プログラムの推進システムが、医療費抑制効果ばかりではなく、地方自治体の地域づくり政策に重要な効果を及ぼす可能性について検討した成果を第70回日本公衆衛生学会において報告をした。こうした副次的な効果は健康・運動・スポーツ政策の「公共性」構築という視点からみれば、NPO法人の地域スポーツクラブが公共的主体として重要な社会的意義をもつ可能性があるといえる。 いったい法人格をもった総合型地域スポーツクラブは、どこまで健康・運動・スポーツ政策の公共的主体としての可能性をもっているのか。本年度は、全国の健康・運動・スポーツ系民間非営利法人のうち地方自治体から多くの事業を受託している総合型地域スポーツクラブに対して現地調査を実施した。公共スポーツ施設の指定管理事業を受託しているスポーツクラブを対象とし、この受託事業によって、クラブという民間非営利法人と地方自治体の問の協働性がどのように構築されているのか詳細に調査をおこなった。ところが、地方自治体の資産、予算、雇用の三つが縮小化される中、行政内に設置されていたさまざまなスポーツ組織の事務的業務の移転がおこなわれていること、行政内部の雇用調整の受け皿として民間非営利法人がその役割を担っていることなどが明らかとなった。地方自治体の行財政縮小下(ネオリベラリズム)における日本のスポーツ行政が、公共スポーツ施設の総合型地域スポーツクラブへの指定管理委託という旗印の下に進められていることを認識しなければならない。そこでは、自治体内部への公共スポーツ政策の立案にかかわる重要情報が遮断される可能性があること、政策立案能力の低下が懸念されることなどを踏まえて、健康・運動・スポーツ系民間非営利法人は事業拡大や地方自治体との協働事業を推進していく必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は総合型地域スポーツクラブや健康・運動・スポーツ系民間非営利法人に対して、20クラブ以上のインタビュー調査を実施することができた。ここで収集したインタビューデータは、本研究課題を遂行するにあたって、数多くの研究視点を提供してくれるものであり、とりわけ「スポーツの公共性」とは何か、「スポーツの公共主体」は今後、だれがどのような過程を経て担うのかについて、いくつかに類型化できる情報が入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、「人的支援策」の構築と構築までのプロセスを明解に提示できることだと思っている。ただし、昨年度の現地調査をおこなってきた中で次のようなことを検討しなければならないと感じた。それは個々の事例にみる「スポーツの公共主体」像を明確に類型化しつつ、その上で、支援策を類型別に提示しなければならないことである。そのためには現在収集した現地調査のデータを「研究ノート」のようなかたちで事例的に記述すること優先的にすすめ、同時にこれまで収集したデータとは異なるクラブ事例への現地調査を実施し、類型化の根拠を収集するとともに、支援策構築のプロセスの根拠を提示することである。
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Research Products
(2 results)