2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドーピング規制薬物(アドレナリン受容体作動薬)の影響における分子機構の解明
Project/Area Number |
21500628
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北浦 孝 Kanazawa University, 保健管理センター, 准教授 (00143868)
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Keywords | ドーピング / 筋肥大 / シグナル伝達 / アドレナリン受容体 / 薬理学 |
Research Abstract |
本年度は,成長期ラットにドーピング規制薬物(アドレナリン受容体作動薬)やフォルスコリンなどのc AMP関連の類似薬物を投与して心臓や骨格筋の肥大を誘導し,各組織に存在し核内調節因子に影響を及ぼすことが予測される因子(IGF-I・MyoD・yogenin・PGC-1など)や未分化幹細胞関連因子(Wnt・Notch・Jaggedなど)や蛋白合成と分解に関連する因子(Foxol・Atrogin・wwp1など)のmRNA量をリアルタイムPCR法により定量解析し、その作用の分子機構の解明に取り組んだ。 その結果,アドレナリン受容体作動薬のクレンブテロールの鏡像異性体の(+)-S-体と(-)-R-体が骨格筋の速筋モデルの長指伸筋(EDL)と遅筋モデルのヒラメ筋(SOL)に対してどちらも筋肥大を誘導するもののその原因と考えられる核内転写調節因子の発現に異なる作用を有することを明らかにした。同時にこの鏡像異性体のうち(+)-S-体で骨の成長を抑制する作用が強く表れることをを明らかにした。 これは,通常薬物がラセミ体((+)-S-体と(-)-R-体の混合型)として使用された場合に生じるサリドマイドのような副作用発生の危険を取り除き,薬物が安全に使用されるために必要な貴重な資料を提供するものであり,結果的に生じる筋肥大は同じであっても,そこに至る調節のシステムに直接作用する場合と間接的に作用すると言う異なった形で影響を及ぼすことが明らかとなり,安全な薬物使用のために,単なるパフォーマンス向上を目的とした安易な薬物使用を抑制する上で社会的にも意義あるものである。 来年度は,筋線維タイプ移行に関わるmRNAの解析に加えてウェスタンブロット法を活用し蛋白質のレベルからもこれらの因子の変化の解明に取り掛かる予定である。
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Research Products
(6 results)