2010 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋細胞における糖代謝制御におよぼすストレッチの効果とその分子機構の解明
Project/Area Number |
21500687
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小原 一男 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (60117611)
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Keywords | 骨格筋 / 糖代謝 / ストレッチ / インテグリン / FAK / NOS / シグナル伝達 / マウスヒラメ筋 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームの改善には運動療法が極めて重要な位置を占める。一般的に運動の際にはエネルギー消費に加えて、骨格筋細胞には「受動的ストレッチ(ストレッチ)刺激」も加わる。しかし、ストレッチが骨格筋細胞に及ぼす影響については、これまで詳細な検討はなされてこなかった。申請者らは最近、摘出マウス下肢骨格筋において、ストレッチにより、糖輸送担体GLUT4の細胞膜への移行や糖取込みが促進されることを見出し、骨格筋を受動的にストレッチするだけで血糖値を下げられる可能性を示唆した。本研究では、骨格筋において機械的刺激のセンサーの一つと考えられているインテグリンおよびそれを介して活性化されるNO合成酵素(NOS)のストレッチによる糖取込みへの関与について検討した。マウスヒラメ筋に生体長の20%で1Hzのストレッチ刺激を与えると、糖取り込みの増加が認められた。この増加はインテグリンを阻害するRGDペプチドおよびNOS阻害薬N^G-nitro-L-arginine(L-NNA)により抑制された。また、インテグリンが機械的刺激を受容することで活性化されるfocal adhesion kinase (FAK)がストレッチ刺激により活性化された。さらに、FAK阻害薬PF-573,228によりストレッチ誘発性糖取り込みが抑制された。一方、運動や筋収縮による糖取り込みに関与すると考えられているAMP-activated protein kinase (AMPK)はストレッチ刺激により活性化されなかった。以上の結果より、マウス骨格筋において、ストレッチ刺激による糖取り込みに、インテグリン/FAK系を介したNOSの活性化が関与することが示唆された。また、ストレッチ誘発性糖取り込みは運動や筋収縮とは異なる機構により起こることが示唆された。
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