Research Abstract |
虐待防止を見据えた基礎研究において,子どもが安定して育っていくためには,養育者が応答的で,常に子どもに応答をきちんと返すことの重要性が示されている(Emde et al., 1993)。この能力を情緒応答性と言う。本研究では,この情緒応答性に焦点を当て,養育者は乳児の何を手がかりとして乳児の情動や状況を読み取っているのか,養育者は乳児に対してどのような反応を返しているのか,養育者は乳児の情動認知と乳児への情動表出の間にはどのような情動調整を行っているのかを明らかにする目的で研究を行った。 被験者は乳児の母親10名と女子大学生15名で,対象乳児は生後5ヶ月の保護者の同意を得た乳児10名であった。ブックスタートのおすすめ絵本の中から「かおかおどんなかお」(藤原良平作,こぐま社)を選出した。実験室と操作室からなる生活環境実験室で行った。別室で,乳児不在時音声を抽出し,録音した。被験者の現在の感情の自己評定を行った後、唾液を採取した。次に,被験者は実験室に入室後,椅子に座り,10分間乳児を膝の上に座らせて絵本を読み聞かせるように指示した。 対乳児行動をカテゴリーに分類した結果,対乳児行動総数は,母親が62.2±8.8%,学生は46.4±11.8%であり,母親に有意に多く出現していた(p<.01)。対児行動の中でも特に,「乳児に接触する」,「絵を指差す」,「絵本を動かす」行動が母親に有意に多くみられた(p<.05)。母親は,乳児の不快情動を平静化したり,注意喚起を促す働きかけを行っていたりしていることが分かった。母親,学生ともに,乳児音声の基本周波数,持続時間がともに有意に上昇,増加した(p<.05)。このことは,母親,学生ともに乳児に対する読み聞かせ時にマザーリーズが出現することを示している。
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