2011 Fiscal Year Annual Research Report
家族経営協定締結事例にみる親世代・子世代の共同と分離
Project/Area Number |
21500713
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
大友 由紀子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (00286121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 マサエ 山梨県立大学, 国際政策学部, 教授 (50105970)
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Keywords | 家族経営協定 / 世代間関係 / 夫婦家族制 / 直系家族制 / 世代継承 / フォーカス・グループ・インタビュー / 家族農業経営 |
Research Abstract |
家族経営協定締結事例を調査対象として、農家生活における親世代と子世代の世代関係の変化を実証的に把握し、夫婦家族制の下での家族農業経営の継承を考察した。研究最終年度は、岩手県水沢地方農業担い手女性塾(以下、女性塾と記す)メンバー9名を対象として初年度末に実施したフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)での語りをテキスト分析し、さらに語りの背景にある個々の経験を確認するため、FGI参加者に対して個別訪問調査を実施した。女性塾は1992年に40代の女性農業者リーダー15名(1944年~1952年生)によって結成された。全員が夫婦で農業に従事し、1996年から2001年にかけて家族経営協定を締結した。FGI実施時にはほぼ向老期にあった。親世代とは一貫同居だったが、後継者が定着して直系家族を再生産しているのは2名だけで、嫁との同居経験者は少数派になった。同居する場合、家族経営協定によって早期から嫁の地位を明確にし、緊張関係を回避していた。しかし、同居経験がない場合は、嫁姑関係をネガティヴに評価していた。世代間のサポート関係は、双系的になっていた。自らの育児期には、育児は姑の担当だった。ところが今日、対象者の育児対象は、主として婚出した娘の子どもである。娘であれば育児方法について率直に意見を述べる。FGIで最も強調された世代ギャップは育児方法だった。後継者が定着している場合、経営部門がより専門化し、生産技術・経営技術を持つ男性と持たない女性とで性別分業が世代継承されていた。しかし、後継者が定着してない場合、向老期の農業者に適合的なグリーン・ツーリズムやグリーン・ケアといったオールタナティヴな農業へのシフトが見られ、他産業に従事した娘が継承しうる新たな経営部門が創出されていた。伝統的な男子による家族農業経営の世代継承が困難になる今日、女子による経営継承にも着目する必要があろう。
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Research Products
(5 results)