2011 Fiscal Year Annual Research Report
ディーセント・ワークと企業の社会的責任-日英比較による生活
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21500718
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
斎藤 悦子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (90298414)
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Keywords | 企業の社会的責任 / ディーセント・ワーク / 生活経営学 / ステイクホルダー |
Research Abstract |
グローバル経済が進展する中、私たちの生活を規定する企業活動は持続的成長を図るために様々な方策を実施している。その方策の一つが、昨今注目されている企業の社会的責任(CSRと呼ぶ)であり、多くの企業がCSRを長期的重点戦略としている。CSRが及ぶ範囲は、社会的公正性、倫理性、環境、人権と幅広い。従来の日本のCSRは、環境問題解決に特化され、ステイクホルダーである生活主体としての労働者・消費者・家庭人・地域住民への社会的公正性や倫理性、人権に関する取組みが遅れている。 企業側からCSRが語られることは多いが、生活主体へのCSRの関わりを扱った研究は少ない。本研究は、生活主体の立場から、現在の生活経営学的課題にCSR視点で接近し、社会的公正性、倫理性、人権といった領域に、CSRがいかに関わることが可能かを検証したものである。 具体的にはワーク・ライフ・バランスや、働き方(正規とパート)による賃金格差、ジェンダー平等を「ディーセント・ワーク」という概念を用いて分析し、生活実態を把握し、「ディーセント・ワーク」がCSRとして真に追求可能かを検討した。さらに、Grosser&Moon(2006)のCSRとジェンダーメインストリーミングの調査研究をもとに、日英のCSR報告書分析を実施した。 その結果、これまで企業戦略という位置づけで論じられてきたCSR研究に生活者と市民社会(NGO、NPO)の視点を加えることに成功した。この視点は今後、発展させていきたいと考える。さらに報告書分析では、日本のCSRはワーク・ライフ・バランスの推進については、2006年以降、取り上げられる回数が増えたが、ジェンダー平等に関わる事柄については、それほど変化していなかった。
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