2010 Fiscal Year Annual Research Report
トランス脂肪酸による炎症とラジカル生成に対する魚油の効果
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21500775
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
木谷 誠一 東京海洋大学, 保健管理センター, 教授 (10231284)
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Keywords | 肥満細胞 / 脂肪酸 / 過酸化脂質 / トランス脂肪酸 |
Research Abstract |
本研究の目的は、食生活の乱れと安全性が社会問題になっている中、脂肪酸特にアラキドン酸とトランス脂肪酸が、炎症に及ぼす影響を検討するものである。総論的臨床的に脂肪食の制限が喧伝されているが、各論的に脂肪酸の種類の特定まで至っていない。そこで細胞レベルとヒトレベルで実証し、栄養保健と予防医学にひとつの筋道をつけることである。 1.トランス脂肪酸も、天然由来と人工的に加工したものとは、細胞レベルでの炎症惹起作用の違いが見られた。オレイン酸(オクタデセン酸)に対して水素付加によるエライジン酸(トランスオクタデセン酸)は、炎症効果が強かった。一方天然由来のトランスバクセン酸には、炎症促進は認められなかった。 2.ヒトを対象とした栄養調査により、トランス脂肪酸やアラキドン酸の摂取量の大きいと推定される被験者の血清の測定のため、エキシマー蛍光誘導体を使用したヒスタミンの高感度HPLC法を検討した。しかしエキシマー蛍光誘導体によるヒスタミン測定は、既報(福岡大学薬学集報7(0),13-24,2007)と違いできなかった。血清中ヒスタミン測定について頓挫した形になったが、ポリアミン測定は可能であったので、その利用を模索中である。 3.肥満細胞と脂肪前駆細胞およびマクロファージとの共培養における炎症の増強の検討をおこなったが、特に炎症増強は認められなかった。 4.広義の脂質であるガングリオシドは、細胞毒性(MTTアッセイ)や肥満細胞活性化(ヘキソサミニダーゼ)を有意に抑制した。 これらの知見は、細胞膜中のリン脂質を構成する脂肪酸と細胞内の炎症性シグナル伝達とのクロストークが示唆されるが、受容体の関与など他の可能性も検討している。
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