2011 Fiscal Year Annual Research Report
トランス脂肪酸による炎症とラジカル生成に対する魚油の効果
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21500775
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
木谷 誠一 東京海洋大学, 保健管理センター, 教授 (10231284)
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Keywords | 肥満細胞 / 脂肪酸 / 過酸化脂質 / トランス脂肪酸 / 魚油 |
Research Abstract |
平成22年国民健康栄養調査によれば若者の脂肪エルギー比率は、20代の年代に多く、とくに飽和脂肪酸の摂取量が増加している。疫学的あるいは臨床的に脂肪食の制限が喧伝されているが、本研究は、トランス脂肪酸と魚油由来の脂肪酸の炎症惹起性の細胞反応を検討し、栄養保健と予防医学にひとつの筋道をつけることを目指した。 1、トランス脂肪酸はじめ各種脂肪酸すなわちパルミチン酸,アラキドン酸,リノール酸,γ-リノレン酸,α-リノレン酸の細胞レベルでの効果として、炎症とラジカル誘起性を細胞内活性酸素測定、細胞膜の過酸化脂質の測定、ウェスタンブロット法を用いた細胞内タンパクリン酸化シグナル伝達機構に基づき検討した。トランス脂肪酸も、天然由来と人工的に加工したものとは、細胞レベルでの炎症惹起作用の違いが見られた。オレイン酸に対して水素付加によるエライジン酸は、炎症効果が強かった。一方天然由来のバクセン酸には、炎症促進は認められなかった。しかし、DHAやEPAは炎症促進作用を示さず、炎症シグナル、特にトランス脂肪酸によるp38,ERKのリン酸化を抑制した。 2、ヒトを対象とした栄養調査を継続した。比較的魚食になじんでいる傾向があるものの、ファストフードでの食事が多い傾向にある。 3、エキシマー蛍光誘導体によるヒスタミンの高感度HPLC法は、既報と違いできなかったが、ポリアミンの迅速簡易な測定が可能であった。 4、広義の脂質であるセラミドは、マクロファージや肥満細胞活性化(ヘキソサミニダーゼ)を有意に抑制した。これらの知見は、細胞膜中のリン脂質を構成する脂肪酸と細胞内の炎症性シグナル伝達とのクロストークが示唆されるが、受容体の関与など他の可能性も検討している。
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