Research Abstract |
文化の多様性と自然科学の普遍性の関係を理解することは,文科系学生の科学リテラシーとして,また理科系学生の社会リテラシーとしても,不可欠なものである.科学の適用限界を理解することは,科学の全体像を理解するともに,文化の多様性が自然科学の普遍性と矛盾しないことを理解するために必要な条件である. 平成21年度は,東北大学において研究代表者及び分担者が共同で構築してきた「自然科学総合実験」のテーマ「弦の振動と音楽」を,文化の多様性と科学の普遍性・適用限界を学ぶに際して,より適した素材にするため改良を進めた.第一に,旧来のテキストに2つの文化的様式(この場合,平均律と純正律という2つの異なる音階)の相違,及びそれぞれの長所・短所を直感的に学生自ら把握出来る実験箇所を加え,これを試行し,有用性を確認出来た.第2に,学生と教員がインタラクティブにコミュニケーションを取るためのツールとして,クリッカーと呼ばれる機器を導入し,予備的な試行を行うことで,その有用性を確認できた.このツールを使うことによって,学生たち自身が,多様な価値観やものの見方,考えを持つ事実が,実験授業の冒頭部で確認できると予想される.これらの内容は,平成22年度に,より発展させる予定である. 一方,市民が科学リテラシーを身につける必要性,身につけるべき内容を理解するために,司法における科学リテラシーについて,司法における科学リテラシーを例に共同研究者らと研究を進め,その内容をハーバード大学における研究会や,学術雑誌などで発表を行った,これらの反響などを通して,特に文科系学生が必要な科学リテラシーは,科学の個別的内容に関する知識ばかりでなく,科学という「営み」に対する理解(knowledge about science)であることが,明らかになってきた.これらに対する更なる研究は,平成22年度に行う予定である.
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