Research Abstract |
本年度は,次の目標で研究開発を進めた 1)文化の多様性と科学の普遍性の関係を,具体的な実験を通してデータを得,そのデータ(エヴィデンス)を元に考察可能とする学生実験テーマを開発すること.特に,一般に強調されがちな,文化の普遍性と科学の関係ばかりではなく,文化の多様性と科学の関係を考える際不可欠となる,科学の適用限界に学生自身が気づきうるようなテーマの開発を行うこと. 2)社会における議論に科学がどう扱われているか考察することは,学校教育,特に高等教育における科学リテラシー教育の結果を知る上でも,現実社会への影響の大きさからも重要であるため,非専門家による科学的議論や科学観を調査し,問題点を明らかにすること. この目標の下,自然科学総合実験について,文科系学生向け,理科系学生向けの双方において,カリキュラムの改善を行い,大震災直後ということもあり,特に文科系学生実験において良好な反応を得ることが出来た.さらに,初年次学生教育として開講されている「基礎ゼミ」において,文科系学生・理科系学生双方の学生が共通参加するゼミにおいて,日本フィルハーモニー交響楽団の伊波睦氏の協力を得て,アクティブラーニングのワークショップ形式ゼミを開講し,学生実験の改善にも応用できると思われる,様々な萌芽的アイデアを得ることが出来た. また,現実社会の中で,一般に非専門家である市民の科学的論点把握と,それに基づいた判断の助けになるような科学教育のあり方や課題を明らかにする目的で,政治学者と共同研究を行い,その研究成果に基づいた論考を発表した.これらの成果は,本年度の研究成果として記載している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学リテラシー教育としての大学初年次・理科実験教育は,文科系学生向け,理科系学生向けともに順調に経緯し,科学の適用限界について,学生自らが気づきうるテーマとしての完成度が高まってきた.また,その成果を海外の英文誌にも発表することが出来た.また,非専門家の科学観の調査に基づいて,岩波「科学」誌に,これまでの科学教育の問題が社会にどのような混乱をもたらしているかを,PISAテストなどの国際的な動向・視点を踏まえて,解説記事を著した.年度末には,これらの成果に基づいて,日本物理学会年会において,シンポジウム講演を行い,これらの問題意識を、科学界の広い研究者とも共有することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果を踏まえ,今後解決すべき科学教育上の問題を,科学教育に関係するより広い研究者・教育者と共有すると共に,問題意識を踏まえた解決策について,教材テキスト作成をその核としながら,研究開発を進める.
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