Research Abstract |
本研究は,情報表現の方法が人間の情報判断にどのような影響を及ぼし判断を左右するかについて学習者のメタ認知を促すことにより,小学生から中高生までの幅広い学習者の情報判断力および情報表現力を高めることを目的として,学習教材を開発しようとするものである。「メタ認知」は,端的に言えば「認知に対する認知」を意味する。情報判断について言えば,「なぜ人間は誤った判断をしてしまうのか」「判断の誤りにはどのような種類があるのか」「判断の誤りを防ぐには,どのような点に注意すればよいのか」といった知識に加えて,自分の情報判断に対するモニタリングやコントロール(制御)が,メタ認知に含まれる。こうしたメタ認知を育てることが,学習の転移を促進し,学んだ知識・スキルの活用を促すことが徐々に明らかになってきている。 本年度はまず,次の手順で,情報判断を誤りやすい情報表現の事例を収集し分析に着手した。 1)子どもたちにとって日常的な素材である新聞,雑誌,広告,各種説明書,Webサイト等から,受け手が情報判断を誤りやすい情報表現の事例を100例程度収集した。 2)収集した情報表現事例を申請者が分類してカテゴリー化を行い,カテゴリーごとに複数ずつ,発達段階を考慮しながら典型事例を選択した。(たとえば,「あるダイエットプログラムを完了すれば,必ず5キロ以上の減量に成功する」といった宣伝文句は,受け手に確実な効果を期待させる。この宣伝の根拠として,そのプログラムを完了した人は,全員5キロ以上の減量を達成したという事実が挙げられているのだが,効果を実感できずに途中でやめてしまった入のことには触れられていない。)こうした事例の選択に際しては,小学校,中学・高校の教師の意見を参考にした。 3)現在,数名程度ずつサンプリングした児童・生徒がそれらの情報表現からどのような判断を行うかを発話思考や筆記を通して調べているところである。
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