Research Abstract |
本研究は,学習時における学習者と教師の双方について,脳内生体情報の計測・分析をもとにその特徴を明らかにするとともに,生理学的データをもとに学習者の理解を誘発する有効な教育方法のあり方を検証することを目的としている。本年度は,学習者役(解答未把握)と教師役(解答把握済み)の双方の脳活動データを同時計測し,教授-学習過程における脳活動データの特徴の分析を行った。除法虫食い算問題を実験課題として,学習者役は問題解決に取り組み,教師役は学習者役の解答進行状況に応じて,ヒント(解答の一部,6回分)を順に学習者役の前にあるディスプレイ画面にボタン操作で表示するようにした。大学生14名の被験者(学習者役7名,教師役7名)に対して,実験課題3問を制限時間120秒間(各問題)として実施した。 行動観察,事後のアンケート調査,及び脳活動(ヘモグロビン濃度)計測実験結果より,学習者役と教師役の脳活動は課題遂行の状況に応じて連動して変化することが明らかになった。学習者役が課題解決の方略未獲得の時間帯では,学習者役のヘモグロビン濃度が上昇し,それに連動する形で少し遅れて教師役のヘモグロビン濃度が上昇した。また上昇の度合いは,概ね学習者役の上昇の度合いに比例した。一方,課題解決の方略獲得後には学習者役と教師役の双方のヘモグロビン濃度の上昇が抑えられるようになった。 学習者役の解答進捗状況(理解の度合い)に応じて,教師役が「どのタイミング(120秒内)」に「どれだけの分量(6回分)」の支援(ヒント提示)を行うかを判断する時間帯に,教師役の被験者の脳活動が賦活するということが明らかになった。このことは,学習者の理解の状況を適切に分析し,支援の可否を判断することが,教師の重要な資質に関わることを示唆するデータであると考えられる。
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