2011 Fiscal Year Annual Research Report
学習困難児の主体的な活動参加を促すコンピュータツール開発と協同学習のあり方の研究
Project/Area Number |
21500925
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
東原 文子 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (60272150)
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Keywords | 学習困難児 / コンピュータ教材 / 教科学習 / 教材開発 / 協同学習 / 文章読解 / 電子教科書 |
Research Abstract |
いかにして主体的に学習に取り組めるような教材が作れるか、また、協同学習が、学習困難児の教育にどう役立つかについて、基礎的な資料収集、教材の作成と試行を行った。 研究1では、「ひけらかす」「まごつく」など少し難度の高い動作語を説明するビデオ映像教材を作成し、軽度知的障害者4名のグループでそれを用いた協同学習を行った。その結果、ビデオ映像からわかることを話し合った後の、ポストテストにおいては、プリテストに比して、動作語を具体的に説明する語数が数倍に増え、協同学習の高い効果が認められた。 研究2では、コンピュータ画面上のグラフィックオーガナイザー教材を用いて、基本単語40語について機能的特徴、物理的特徴、上位概念、下位概念などを整理する学習を、軽度知的障害者2名に対して指導した。その結果、各単語から連想される語を書き出す「語連想テスト」において、指導前は1~2のカテゴリー(機能的特徴と物理的特徴)からのみ連想していた対象児達が、指導後は、平均して4カテゴリーに渡って連想できるようになるなど、効果が高かった。 研究3では、小学校通常学級に在籍する自閉傾向のある児童を対象に、個別指導において、国語の電子教科書を利用した説明文指導を行い、その効果をみるための評価課題の検討と実際にそれを用いた評価を試みた。効果測定のための評価課題としては、通常学級で用いられるようなペーパーテストのみでは不適切であると考えられた。そこで、映像の音声を消した状態で画面を対象児自身が説明する課題や、模型を使って文章どおりに表現する課題などを組み合わせることで、学習困難児の評価が可能となることが示された。実際に評価をしたところ、どの単元においても、映像を見ることの効果は認められた。さらに、通常学級でもその教材を電子黒板で使用したところ、個別指導を行った対象児が、在籍学級でその予習を活かして学習できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自作教材や市販教材(電子教科書など)の利用は、様々な場面で様々な児童生徒を対象に行うことができている。ただし、その効果測定については、まだ、この分野での評価方法そのものが充分検討されていないため、評価方法の策定からしなければならなかったことが、交付申請時の計画とは異なった。学習困難児が算数文章題や文章読解について、何をもって「理解している」と評価するかが難しかったがほぼ解決してきたので、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的には、本研究では、学習困難児に使いやすいコンピュータ教材を用いた個別指導を行うことから、グループでの活用、さらには、通常学級の中での活用というように、教材活用の場を拡げていきたい。そうすることで、インクルーシブなコンピュータ利用学習の可能性について検討していく予定である。しかし、平成23年度の取り組みで明らかになったように、学習困難児の教科学習における理解度を測るための評価課題そのものの検討をさらに深めていかないと、コンピュータ利用学習の効果の測定が不充分であると考えられる。評価方法も含めた指導方法の提案ができることを目指したい。
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