2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500983
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
愼 蒼健 東京理科大学, 工学部, 准教授 (50366431)
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Keywords | 医学史 / 科学史 / 朝鮮史 / 植民地 / 韓国 |
Research Abstract |
交付申請書に記した今年度の「研究実施計画」に即して、研究業績の概要を示す。 (1)既に前年度に終了。ただし、データをグラフ化する作業を最終段階で行う。 (2)既に前年度に終了。ただし、電気治療師などの非正統医療に詳細についてはさらに吟味が必要であり、こちらは最終段階で整理し、論文にまとめる。 (3)治療の宣伝・広告については、予定を変更し、2011年度の研究とすることにした。 (4)人々の治療選択の実態とその分析については、坂野徹・愼蒼健編『帝国の視角/死角』(青弓社、2010年)所収の論文「植民地期衛生学に包摂されない朝鮮人-1930年代朝鮮社会の「謎」から」にその成果をまとめた。朝鮮農村社会衛生調査会編『朝鮮の農村衛生』(岩波書店、1940年)によれば、農民は上層、中層、下層を問わず、西洋式産婆による出産介助を受けていない。また、日本語能力のない下層農民は、西洋医学の経験を持ち合わせていないことが判明した。その他にも、総督府作成の『生活状態調査』によれば、京畿道水原郡、江原道江陵郡でも、日本語を解さない朝鮮民衆はほとんど西洋医学を選択していない。都市部に関しては検討の余地があるものの、農村部において調査者(=西洋医学の医師)は西洋医学経験のない民衆と出会い、彼らの主訴を理解できなかったと言えるだろう。彼らは伝統医学にだけ身を委ねたわけではなく、病気の種類によっては漢薬種商から薬を購入、また巫俗に頼るケースもある。済州島の報告では、感染症に対して、自宅に札を貼っていたという事例も挙げられている。日本語能力、経済力、病の種類などによって、どのような選択がなされたのかという問題に対しては、最終報告において示す予定である。
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