2010 Fiscal Year Annual Research Report
絵画に生じた結晶様物質に関する研究-顔料と媒剤の関連性および修復処置について-
Project/Area Number |
21500987
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
鈴鴨 富士子 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教育研究助手 (60532497)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 純子 九州国立博物館, 学芸部, アソシエイトフェロー (10532484)
藏品 真理 (栗原 真理) 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教育研究助手 (40532479)
|
Keywords | 絵画 / 結晶 / 顔料と媒剤 / 保存環境 / 修復処置 |
Research Abstract |
平成21年度に実施した油彩画およびアクリル画の調査および分析結果から、油彩画とアクリル画の生成物は状態や形状の異なる様々な種類が確認され、発生原因も複数あると考えられた。また、特定の色の絵具に発生する傾向があることから、顔料と媒剤との関連性があることが推察された。 平成22年度は引き続き作品調査を実施した他、乾性油を媒剤とした油絵具および合成樹脂を媒剤としたアクリル絵具およびエナメル塗料の湿熱劣化実験を行った。実験は70℃、RH90%と70℃、RH30%の2つの条件で行った。試料は市販の油絵具(1社・24色)、アクリル絵具(4社、各7色)、エナメル塗料(4社、各7色)を用いた。その結果、乾性油を媒剤とした油絵具ではRH90%では24試料中、18試料で結晶様生成が確認されたが、RH30%では殆どの試料で生成物が確認されなかった。一方、合成樹脂を媒剤としたアクリル絵具およびエナメル塗料の試料は、70℃、RH90%およびRH30%のいずれの条件でも多くの試料に結晶様の生成物が確認されたが、RH90%よりもRH30%の条件下の方がより 生成量の度合いが大きい結果を得た。これは、作品調査を行った結果、油彩画は温湿度の影響を受けやすい環境で保存された作品に生成物が多く確認されたのに対し、合成樹脂絵具および塗料を用いて制作されたアクリル画などは美術館など温湿度が安定した環境で保管されている作品で生成物が確認されたことを裏付ける結果であり、媒剤の異なる絵具によって、生成する要因が異なることを示した興味深い結果を得ることができた。これは使用材料により保存や修復処置方法を検討する際の指針を示す重要な要素となる。 今後はこれまでの作品調査および実験結果を総合的にまとめ、結晶様物質の生成過程の要因を解明していくと共に、生成物が析出した際の修復処置方法について検討していく。
|
Research Products
(1 results)