2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500990
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Research Institution | Musashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 昭司 Musashi Institute of Technology, 工学部, 教授 (30112981)
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Keywords | 文化財鉄器 / 鉄原料の産地推定 / ヒ素 / アンチモン / 蛍光X線分析法 / 鉄鋼標準物質 / 形状補正 / 分析能パラメーター |
Research Abstract |
本研究は、たたら製鉄法により生産された鉄及びその後加工された鉄器の鉄原料の産地推定を行うため、鉄あるいは鉄器中に含有するヒ素(As)及びアンチモン(Sb)をppmレベルで定量できる高感度蛍光X線分析装置を購入し、その装置の性能を評価し、文化財鉄器の原料期限の解明に本装置を供せられるかどうかを検討することである。すでにわれわれの研究においてAsとSbとの濃度比が重要な指標となることを見出しているが、その分析法は全て原子炉を使用した中性子放射化分析に限定されている。このような特殊な分析法を使用しないでも簡便・高性能・安価な分析法を選択できるように、高感度蛍光X線分析法を本研究に適応し、研究を遂行した。 本年度は、購入した蛍光X線分析装置の性能を評価するため、As及びSbが数ppmから数100ppm含有している鉄鋼標準物質を購入し、検量線を作成すると共に、分析能パラメータ(精度・直線性・検出限界等)の評価を行った。その結果、As及びSbとも数ppm以上鉄器中に含有していれば10数%の精度で定量できることが明らかとなった。しかし、Sbの1~2ppmとなると精度が50%を超えることもあり、満足した成果は得られなかった。 さらに、実試料では試料の形状がまちまちであり、本装置には形状による分析値の影響を補正できるシステムが装備されているが、その性能の評価のために、鉄鋼標準物質をさまざまな大きさに切断し、その分析を行った。その結果、ほぼシステムの影響補正をとり行えることがわかった。 以上の成果を基に、さまざまな大きさの江戸時代の角鉄釘を本装置により分析した。分析値の影響を評価するため、同一試料を化学分析法とレーザー・ICP質量分析法で分析・比較し、本法の妥当性を評価したが、分析値が一致する試料もあったが、数値が異なる試料も一部あった。異なる理由としては、試料中のAsあるいはSbの偏析が推論されるが、また、分析試料の表面状態も影響していることが推察できた。
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