2009 Fiscal Year Annual Research Report
中部アマゾンにおける再生林と裸地の蒸発散に関する研究
Project/Area Number |
21500999
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
土谷 彰男 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 助教 (00263632)
|
Keywords | 中部アマゾン / 裸地 / 再生林 / 蒸発 / 蒸散 / 乾期 |
Research Abstract |
アマゾンの天然林の消失が問題視されるようになって20年ほど経過した。伐採の監視や法的な規制にもかかわらず、火入れや伐採は止まらない。そこで、再生林の再評価が始まった。再生林は多様性やバイオマスの点で天然林に比べれば不完全な林分であるが,降雨を一定期間林内土壌にとどめる効果がある。 初年度は,夏季休暇を利用して、アマゾナス州の州都マナウス近郊の裸地(放棄牧場)と再生林を対象に、乾期の蒸発量と蒸散量を観測した。裸地の蒸発は、熱収支観測によって得られた潜熱フラックスを蒸発の潜熱で割ることによって推定した。最大値が0.5mm・h^<-1>に達した晴天日もあったが、スコールが起こると、潜熱フラックスが高くなっても、地表面温度が上昇しないため、蒸発量は0.2~0.3mm・h^<-1>と低く抑えられた。夜間は凝結(結露)が見られた。結露が起こっていることは露点温度や絶対湿度の日変化からも裏付けられた。平均すると、一日あたりの蒸発量は2.88mmであった。再生林では、地表の蒸発はゼロと仮定し、蒸散を幹内蒸散流量の計測から推定した。優占種のClusiaceaeのVismia cayennensis(俗称:Lacre)とBombacaceaeのBombacopsis munguba(俗称:Munguba)6本を対象に、一日の蒸散流量(SF:1・day^<-1>)を見積もったところ、辺材面積SA(cm^2)とSFはSF=0.049・SA+0.727の関係にあった。この経験式を毎木調査を行った400m^2の樹木全個体にあてはめると、1m^2あたり4.44 1・day^<-1>であった。この値は裸地の蒸発量の1.5倍程度になる。この点では、樹木の蒸散は土壌からの蒸発を上回る。実際、再生林の地下10cm・80cmの土壌水分はともに0.2m^3・m^-3程度と低く、蒸散に使われていたことがうかがえた。裸地の10cmは再生林とほぼ同値であったが、80cm部位は0.49m^3・m^-3と高く、蒸発への水分の供給が及んでいなかった。今後は雨期の動向を調べる。
|