2011 Fiscal Year Annual Research Report
中部アマゾンにおける再生林と裸地の蒸発散に関する研究
Project/Area Number |
21500999
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
土谷 彰男 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (00263632)
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Keywords | アマゾン / 裸地 / 再生林 / 蒸発 / 蒸散 / 土壌水分 / 乾期 |
Research Abstract |
2009年乾期~2011年乾期まで5回にわたって中部アマゾンの天然林・再生林・牧場の3箇所で微気象観測を行った。2,500m2の再生林には27種189個体、天然林には28種211個体の樹木が確認され、地上部バイオマスは前者が74.6t、後者が93.1tと推定された。両サイトのサップフロー(樹幹蒸散流)とその個体の辺材部面積との関係からプロット全体の蒸散量を推定すると、5回の日平均値は再生林では11~23l/day、天然林では13~29l/dayであった。これは8~17t/ha/day、11~24t/ha/dayに相当する。一方、熱収支法で推定した牧場の蒸発量は8~29t/ha/day、降水量は16~113t/ha/dayであった。牧場に家畜が入っていなかった2009年乾期は蒸発が森林の蒸散を上回ったが、家畜が喫食した2010年・2011年の乾期は裸地化し、蒸発<蒸散となった。2009年は牧草の蒸散によって地表付近の潜熱配分が増え、2010年・2011年は長引く蒸発で土壌水分が低下し、地表面での潜熱配分が低下したためである。それは地表面温度の上昇・気温の上昇・相対湿度の低下・地温の上昇・気相率の低下など林内と明らかに異なる環境をもたらした。蒸散はわずかに天然林>再生林であった。雨期に浸透した降雨が乾期に繰り越され、深根性の個体の多い天然林では、蒸散より大きい降水量であっても枯れない。雨期は再生林・天然林の蒸散、牧場の蒸発とも大差はなく、降水量はその数倍あった。地下2深度(80cmと10cm)間の二酸化炭素フラックスを計測したところ、乾期は牧場(0.38~0.52gCO_2/m^2/h)>天然林(0.16~0.27)で上向きフラックス(放出)、雨期は牧場(0.45~0.81)<天然林(0.58~1.02)で、牧草が裸地化すると乾期の放出は増えた。雨期は微生物活性・根の活性が高まり、放出が増える。デンドロバンドで森林の1年間の成長量を計測すると、再生林ではCO2レベルで37.7tCO_2/ha/yr、天然林で30.4tCO_2/ha/yr増加する。天然林の乾期雨期のフラックスを1年分に展開すると、放出量は32.2~56.6tCO_2/ha/yrとなる。放出されてもバイオマスとして30.4t固定される。一方、牧場では412~57.3tCO_2/ha/yrが放出されるが、牧草の固定はなく、ほぼ全量が大気に放出される。再生林のフラックスは未計測であるが、地上部での吸収がある。牧畜の中止、再生林化がアマゾンの乾燥化・温暖化ガス放出を食い止めるのに有効である。
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