2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21501005
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大内 俊二 中央大学, 理工学部, 教授 (00185191)
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Keywords | 降雨侵食実験 / 隆起速度 / 降雨強度 / 堆積域の幅 / 山地の成長限界 / 隆起速度の閾値 |
Research Abstract |
前年度と同じ実験装置を使用して、隆起速度を約0.4mm/hに落とした実験を行った(run26)。総隆起量は357mm、降雨継続時間は1000時間であった。隆起とともに上昇した隆起域の平均高度が200hあたりから上昇速度を低下させ、100mmに達した600hあたりからは、比較的急速な低下とゆっくりした上昇を繰り返して長期的には一定の高度を維持するような様相を呈した。昨年度の実験とは隆起速度が大きく異なるにもかかわらず、堆積域の外に直接土砂が流出するような大きな崩壊が頻発するようになり、平均高度・最高点高度が似たような高さに達してそれ以上の上昇が抑えられるような変化を見せた。これは、上方閾値以外に実験山地の成長限界が存在していることを示唆している。この山地成長限界は、堆積域の幅と砂山構成物質の性質および降雨強度によって規定されると考えられるが、堆積域の幅の狭い今回の実験では、旧装置による実験では疑似平衡状態となった約0.4mm/hの隆起速度であっても山地成長限界に達することができたのだと思われる。隆起速度から見て、狭い堆積域が山地成長限界を低くしたために、疑似平衡状態に至る前に山地成長限界に達したとしたほうが説明しやすい。平均高度の上昇が減速し出すのは、急斜面が発達し斜面崩壊土砂が直接堆積域の外に出てしまうことが目立つようになってからであった。この実験条件での限界勾配が0.6(角度約30°)あたりにあり、これを超えると大規模な斜面崩壊が頻発して高度の低下が起こり、下回ると隆起が卓越して上昇すると推定できる。堆積域の幅が狭ければ、高度がより低いところでこの限界勾配に達することになる。また、霧状の降雨のために同じ降雨量でも表面流が少なくなり、流水による侵食が抑えられた可能性も否定できない。降雨量を増やして、この隆起速度で疑似平衡状態が出現するか確認する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新しい装置では降雨量をより制御しやすいポンプとノズルを使って霧状の降雨を発生させており、そのために灌水チューブを使った従来の実験の場合と降雨量が同じであっても流水による侵食の様子が異なるようであった。この検証のために改めて同じような実験を繰り返さざるを得ないこととなり、全体の進展がやや遅れることになってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、隆起速度を同一にして降雨量を変えた実験を行っている。前回の実験で隆起速度をかなり小さくしたのにもかかわらず実験山地の成長がこの装置における成長限界に達したようであったので、この実験で侵食速度が増加することで装置の限界に達する前に疑似平衡状態となるかどうかを確認できる予定である。この後、堆積域の幅を広げた実験を行い、堆積域の広さが山地成長限界に与える影響を検証するつもりである。
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