2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素同位体比に基づく中国大陸からの石炭燃焼由来微量元素の越境汚染評価
Project/Area Number |
21510018
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
坂田 昌弘 静岡県立大学, 環境科学研究所, 教授 (20371354)
|
Keywords | ホウ素同位体比 / 石炭燃焼 / 微量元素 / 中国大陸 / 越境汚染 / 長距離輸送 |
Research Abstract |
1. 中国における大気エアロゾルのδ^<11>Bおよびδ^<34>S測定 中国を発生源とするホウ素とイオウの同位体比データ(発生源データ)を取得するため、中国のManshan(3試料、2007年9~10月に採取)とMt.Tai(5試料、2006年6月に採取)で採取された大気エアロゾル試料のδ^<11>Bおよびδ^<34>Sを測定した。その結果、δ^<11>Bの平均値はManshanが-6.3‰、Mt.Taiが-9.4‰であり、いずれも石炭に特有な負の値を示した。一方、δ^<34>Sの平均値はManshanが+7.50‰、Mt.Taiが+5.94‰であり、いずれも揚子江以北で産出される石炭に特有な相対的に高い値を示すことがわかった。 2. 日本海側地点における大気エアロゾルのδ^<11>Bおよびδ^<34>S測定 日本海側に位置する長崎県・松浦市において、2004年4月~2006年3月までの2年間に採取された大気エアロゾル試料のδ^<11>Bおよびδ^<34>Sを測定した。また、併せて試料中のB、非海塩性SO_4^<2->(nss-SO_4^<2->)、Naの各濃度を測定した。その結果、冬季を中心に大気中のB濃度が増加するが、これに伴ってそのδ^<11>Bが減少することが観測された。冬季は気温が低下するため、海水中のホウ酸(H_3BO_3)が海塩生成時に揮発しないことを仮定することにより、試料中のNa濃度(全て海塩由来)を基に非海塩性B(nss-B)のδ^<11>Bを求めた。そのδ^<11>Bがいずれも負の値であったことから、nss-Bは石炭燃焼由来とみなすことができた。一方、大気エアロゾル試料のδ^<34>Sは、δ^<11>Bとは反対に冬季に高く、夏季に低下する傾向を示した。また、冬季から春季におけるnss-SO_4^<2->のδ^<34>Sは、上記の中国でのエアロゾルの値に近かった。 以上より、両同位体比をトレーサーとして利用することにより、中国大陸からわが国への石炭燃焼由来大気汚染物質の越境輸送評価が期待できる。
|
Research Products
(2 results)