2010 Fiscal Year Annual Research Report
白神山地(世界遺産)のブナ林更新に対する越境大気汚染の影響とその対策に関する研究
Project/Area Number |
21510029
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
伊豆田 猛 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (20212946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船田 良 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (20192734)
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Keywords | ブナ / 越境大気汚染 / 更新被害 / 被害対策 |
Research Abstract |
ブナの成長、純光合成速度および栄養状態に対する土壌への窒素負荷と石灰処理の複合影響とそのメカニズムを明らかにするために、3年生のブナ苗を用いて、5段階の土壌への窒素負荷処理区(0,20,50,100,200kg N ha^<-1> year^<-1>)を設けた実験および窒素負荷の有無と石灰処理の有無を組み合わせた複合実験を行った。2成長期間(2009年5月5日~2010年11月5日,550日間)にわたって育成したブナ苗の個体乾重量と純光合成速度は土壌への過剰な窒素負荷によって有意に低下した。2010年11月における200kg ha^<-1> year^<-1>で窒素負荷を行った土壌で育成したブナ苗の個体乾重量は、他の処理区のそれに比べて有意に低かった。土壌への過剰な窒素負荷によって葉の純光合成速度が低下したが、その原因として土壌溶液中のMn濃度の増加によって葉内のMn過剰蓄積や根の形態や活性の低下が起こりMg吸収が阻害された結果、葉のMn/Mg比が増加し、Rubiscoの活性化が阻害されたことが考えられる。最も窒素負荷量が多い窒素処理区(200kg N ha^<-1> year^<-1>)において、土壌への石灰処理によって土壌酸性化が緩和され、ブナ苗の葉の栄養状態が改善された。しかしながら、この改善の程度は、窒素負荷がない場合と比較すると葉の純光合成速度に害作用を発現させる程度に留まっていたため、石灰処理によるブナ苗の純光合成速度や個体乾重量の有意な増加は認められなかった。したがって、石灰処理を行う時期を早めることや石灰散布量を増やすことで、より高い改善効果を得られると考えられる。
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Research Products
(7 results)