Research Abstract |
本年度は,昨年度より行ってきた研究の成果を,論文と口頭発表の形で公表することができた。 環境倫理,環境法政策をめぐる哲学的,方法論的基礎理論として,図書"Gerechtigkeit-Theorie und Praxis"に公表しだKyoto School and the World War II",および,法的思考に関する論文三篇を取りあげることができる(下記,11.研究発表(平成22年度の研究成果)を参照せよ)。 哲学的・倫理的基礎理論から環境公害問題を解明した成果として,主に,論文「社会的費用,成長の限界,成長の権利」を取り上げることができる。この議論は,中国吉林大学の国際学会において招待講演の形で公表する機会を得て,国際的に関心を共有してもらうことができた。 方法論的基礎理論から出発した成果として,主に,図書『各国憲法の差異と接点』に収録された論文「現代型訴訟としての水俣病事件」を取り上げることができる。水俣病事件の現代型事件としての特質を,アメリカの公共訴訟との対比で明らかにしつつ,各判決の分析を通して要件事実論に照らしてハード・ケースであることを同定したものである。本成果は,憲法,民事訴訟法,英米法,法理学の各学問分野に横断する学際的なアプローチとしての意義を有すると位置づけられよう。 水俣病事件に関する実証研究の成果は,上記論文のほか,中国語図書において翻訳された「司法審判中公害問題的解決及其限界」がある。また,社会実践的には,新潟県立水俣病事件資料館における招待講演において,社会に対する成果発表の機会を得て,研究の意義を理解していただけるように努めた。 計画最終年度である次年度に残された課題として,実証面では,水俣病事件に関する資料の整理収集が引き続き残されている。理論面では,分析手法として,システム理論,合理的選択理論,ガバナンス論など,学際的かつ多角的なアプローチが引き続き必要であると考えている。
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