2012 Fiscal Year Annual Research Report
法運動と社会変動-産廃処理施設反対運動をめぐって-
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21510046
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
樫澤 秀木 佐賀大学, 経済学部, 教授 (60214293)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 産業廃棄物 / 地元合意 / 意味ある応答 / 理解 / リスク/コミュニケーション |
Research Abstract |
今年度は、産業廃棄物処理施設紛争全般ではなく、特に争点となった「地元合意」の問題に絞って分析を進めた。これは、産業廃棄物処理施設の設置に当たって、多くの道府県が、産廃業者に地元との合意を取得するよう行政指導していたが、政府はこの指導は法的に問題があるとして、その廃止を求めていた。しかし、各道府県議会や住民、マスコミは、この「地元合意」の行政指導が必要であるとして、政府に反発していた、という構図の問題である。ところで、この「地元合意」の行政指導を要綱に盛り込んでいる自治体は、今日では皆無である。 今年度は、全国紙・地方紙を含めて、この問題に関する記事を網羅的に集め、問題の背景を探った。また、幾つかの自治体にヒアリングを行った。以上の成果の一部を、学会で発表し、学会誌に掲載した。 学会発表:日本法社会学会(京都女子大学、2012年5月13日)「紛争処理とリスク・コミュニケーション―合意から理解へ―」 学会誌:「法社会学」78号「紛争処理とリスク・コミュニケーション―「合意」から「意味ある応答」そして「理解」へ―」p.195-214
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.新聞記事を網羅的に検索することによって、産業廃棄物紛争の構造と推移について大まかな分析はできた。ただ、それを実証するデータがまだ不足している。とりわけ、国会での議論と都道府県での排出量の変化について、データを集め切れていない。 2.判例の変化については、おおまかな分析はできた。しかし、まだ不十分である。 3.学会での議論については、大まかな理解はできた。しかし、まだ遺漏がある。 4.産業廃棄物処理施設設置に関する「地元合意」の問題は、整理して、学会発表・学会誌掲載を果たすことができた。これは大きな成果であるが、いくつかの道府県をピックアップして、この問題についての経緯と意識をヒアリングする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が、本研究の最終年度に当たるため、暫定的なまとめを行う必要がある。その方策については、以下のように考えている。 1.国会での議論を整理する。とりわけ、廃棄物処理法が大きく改正された97年と2000年前後の国会での議論をしらべる必要がある。 2.判例や学会での議論については、不十分な点を補足する必要がある。 3.常勤に述べた「地元合意」について、それが県政上大きな問題となった岡山県、宮城県、北海道については、ヒアリングに行く必要がある。 4.新聞の関連記事数をしらべることにより、産業廃棄物の問題に関する社会的注目がどのように推移していったかを分析する。 5.以上に基づき、90年代から2000年代にかけて、産業廃棄物問題が、社会的に、あるいは政治的に、法律論的にどのような問題として捉えられ、処理されてきたかを明らかにする。
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