2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境税が企業のイノベーション活動に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
21510049
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
伊藤 康 Chiba University of Commerce, 商経学部, 教授 (10262388)
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Keywords | 環境税 / イノベーション / 動学的効率性 / R&D |
Research Abstract |
本年度は、環境税が企業のイノベーション活動に与える影響を実証的に検討するための準備として、聞き取り調査やデータ・資料の収集を行ないながら、一部に関しては分析を始めている。 検討の中心は、多くの環境税が導入されているスウェーデンの事例である。特に炭素税がイノベーションに与えた影響を分析するため、国内での十分な予備調査・文献調査を行なった上で、2010年2月にスウェーデンを訪問し、データ・資料の収集・聞き取り調査を行なった。まず、様々な聞き取り調査や文献調査から、炭素税導入により地域熱供給部門において化石燃料からバイオ燃料への転換が急速に進んだが、そのほとんどが漸進的技術であり、革新的技術の導入はそれほど多くないことが明らかになった。現在、聞き取り調査を中心とした事例研究の成果をまとめているところである。また、時系列データを利用した環境税の「シグナリング効果」の有無の定量分析は、結果が不安定なため、今後も検討を続ける。シグナリング効果の有無を定量的に明らかにすることができれば、環境税という政策手段の有効性に関する新たな評価指標を提供することが可能になる。環境税の支払額が企業の研究開発活動に与えた影響に関する定量分析は、データの信頼性が必ずしも十分ではないので、別の方法を検討中である。 スウェーデンの他に、日本の事例も検討した。日本で大気汚染被害者に対する補償金を調達するために、硫黄酸化物の排出量に応じて賦課金を課した「公害健康被害補償法」(1973年導入)が技術開発に与えた影響の分析を行なった。公健法賦課金は、特に1980年代に入って高騰するが、その時期に排煙脱硫等、硫黄酸化物処理技術に関する特許出願は非常に少ないことから、賦課金は技術の普及には寄与したが、技術開発を促進するという効果は小さかったと考えられる。技術開発インセンティヴを与えなかった理由の検討は、今後の課題である。
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