2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境税が企業のイノベーション活動に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
21510049
|
Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
伊藤 康 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10262388)
|
Keywords | 炭素税/エネルギー税 / 技術開発 / 技術普及 / 動学的効率性 / シグナリング効果 |
Research Abstract |
スウェーデン紙パルプ産業の企業レベルの個票データを用いて、炭素税の支払いが企業の環境関連研究開発支出に与える影響に関して定量分析を行ってきており、その結果を下記のように、大学紀要、国際学会での報告、及び学術論文(査読有:近刊)としてまとめた。理論的には、炭素税等の環境税は継続的に負担が生じるので、それを低減するような研究開発支出を促進すると考えられているが、本研究による分析では有意な影響を与えているという結果は得られなかった。これは、国際競争力の観点から、製造業に対する炭素税率が低い水準に抑えられていること、炭素税導入から時間がたっているので影響が出にくいといったことが原因として考えられる。また個票データの欠損値が多く利用可能なデータ数が十分ではなかったので、利用したサンプルが必ずしも母集団を代表していない可能性もある。 また、スウェーデンにおける炭素税導入が研究開発活動に「シグナリング効果」(環境税の導入によるエネルギー価格等の上昇は、同程度の生産者価格の上昇よりも省エネ等のインセンティヴ効果が大きくなる効果)を与えた可能性に関して、産業別時系列データを用いた「可変パラメータモデル」による定量分析を行った。炭素税導入後、いくつかの産業において、エネルギー価格に対する研究開発支出の反応が大きくなっており、シグナリング効果の存在した可能性はあるが、推計結果が安定的ではないため、現在更にモデルを修正中である。 環境税が研究開発活動に対して与えた影響に関する聞き取り調査からは、環境税は漸進的な技術普及等にはプラスの影響があったが、革新的な技術開発に対して大きな影響を与えたという証言は得られなかった。 なお、スウェーデンにおける炭素税/エネルギー税の導入が自動車燃費に与えた影響に関する定量分析を行い、その結果を2012年9月に開催される国際学会(査読有)で報告予定である。
|