2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷とは無関係に遺伝的不安定性を誘発する機構と細胞がん化における役割
Project/Area Number |
21510054
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
布柴 達男 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10270802)
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Keywords | ヘテロ接合生喪失 / 遺伝的不安定化 / phenyl hydroquinone / dimethyl sulfoxide / 染色体異数化 / 非変異・発がん物質 / Hog1-Swe1 pathway / morphogenesis checkpoint |
Research Abstract |
ヘテロ接合生喪失(loss of heterozygosity ; LOH)などのいわゆる遺伝的不安定化は、突然変異誘発とともに細胞がん化の重要な過程であると言える。すでにLOHの誘発には、DNA損傷が引き金になり相同性組み換えなどを介した経路、DNA損傷とは無関係に染色体の分配異常などを介して引き起こす経路の2つの経路を発見し、o-phenylphenolの代謝物phenyl hydroquinone(PHQ)を始め、種々の非変異・発がん物質が後者の経路によりLOHを誘発することを示してきた。そしてそれらがHog1-Swe1 pathwayの活性化によるmorphogenesis checkpointにより細胞周期G2/M期で停止すること、そしてそのHog1-Swe1 pathwayの活性化がHQによる染色体異数化やLOHの誘発に寄与することを見いだしてきた。 これらの検討の過程で新たに、遺伝毒性試験の試験薬溶媒として頻用されるdimethyl sulfoxide (DMSO)が10%以上の濃度で濃度依存的に染色体分配異常に伴うLOHを顕著に誘発することを見いだした。またそのLOH誘発も、PHQと同様に、Hog1やSwe1の欠損株では見られなくなることを確認した。このことは、DMSOがPHQ同様、Hog1-Swe1 pathwayを活性化し、morphogenesis checkpointによる細胞周期を停止や染色体分配異常を引き起こす可能性を示唆している。今後、Hog1のリン酸化やSwe1の安定化を検討するとともに、Hog1の上流でこのpathwayの活性化に寄与するといわれるSln1やSho1の関与について検討し、これまでに発見したPHQやHQ、 DMSOなどがどのような機構でHog1-Swe1 pathwayを活性化するのかを明らかにし、染色体分配異常やLOH誘発との関係を明らかにしたい。
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