2011 Fiscal Year Annual Research Report
近年の皮膚癌増加に対する化学物質と紫外線の複合影響の寄与ーヒストン修飾の観点から
Project/Area Number |
21510071
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊吹 裕子 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (30236781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊岡 達士 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (40423842)
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Keywords | ヒストン / リン酸化 / アセチル化 / 複合曝露 / エピジェネティクス / 紫外線 / DNA損傷 / 発がん |
Research Abstract |
ピストン化学修飾を誘導する環境因子として、これまでの検討において最も顕著な修飾変化を示した長波長紫外線とホルムアルデヒドを中心に、さらにそのメカニズムや発がんとの関連性等について検討を行った。長波長紫外線、ホルムアルデヒド共に顕著なピストンH3リン酸化(Ser10)を誘導したので、免疫染色法によりピストン修飾部位の局在を確認したところ、ヒストンH3リン酸化(Ser10)部位は、DNA損傷のマーカーであるH2AX(Ser139)リン酸化部位とは全く異なっていた。また、H3リン酸化(Ser10)は、ATM阻害剤等により抑制されないことからも、DNA損傷とは無関係にリン酸化されることが示された。さらに、MAPキナーゼ系の阻害剤やそれに対するsiRNAによりそのリン酸化が抑制され、増殖シグナル経路を介することが判明した。長波長紫外線では、明らかなピストンH3アセチル化の亢進が認められ、これはピストンH3リン酸化(Ser10)とは異なる機構で誘導されていた。発がんプロモーションに関連する前がん遺伝子の転写活性の上昇をChIP法により検討したところ、例えばホルムアルデヒド作用後2時間において、c-fosプロモーター領域に顕著なピストンH3リン酸化が認められ、ホルムアルデヒドの発がんプロモーションとの関連性を明らかにすることができた。以上の結果から、紫外線や化学物質の複合曝露時には、それらによるDNA損傷を起因とし、化学物質のプロモーション活性により発がんが亢進する可能性が示唆され、その過程において複数のピストンの化学修飾を伴うことが明らかになった。また、それらのピストン修飾変化が、紫外線誘導DNA損傷・修復に影響しているか否かについてELISA法によるDNA損傷の定量により現在検討中である。
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