2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞分化のモデル培養系へのビスフェノールA曝露とエピジェネティック変異
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21510072
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
矢追 毅 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 助教 (40311914)
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Keywords | 内分泌かく乱物質 / エピジェネティクス / 発生・分化 / 脳・神経 / 環境化学物質 / 環境エピジェネティクス |
Research Abstract |
神経前駆細胞から神経細胞への分化を追跡できるP19細胞をモデルとした本研究を通じて、神経前駆細胞が神経細胞へと分化・成熟していく際に、BPAが及ぼす影響を、エピジェネティックスの視点からみた分子レベルの問題に還元し、神経系へのBPA作用機構の解明に貢献することをめざす。1. BPA曝露が未分化細胞の増殖能・細胞死に与える影響を指標に、培養実験に用いるBPA添加濃度を決定した。種々の濃度での培養では増殖阻害は観察されず、一部の濃度においてのみ倍加時間の延長を認めた。FACS解析の結果からは、何れの濃度においても細胞死を認めなかった。今回調べた濃度で、倍加時間の延長を惹起しない最大濃度を、以後の実験での添加濃度として採用した。未分化な細胞を神経細胞へと分化させる培養系では、BPA添加時期の異なる3群(未分化時のみ、分化誘導時のみ、全培養期間)と無添加群(対照群)を設定した。2. 神経細胞に最終分化した細胞のトランスクリプトームにBPA曝露が与える影響を、DNAマイクロアレイを用いて解析した。添加時期の異なる各群と対照群間での比較から発現変動遺伝子を抽出した。分化誘導時のBPA曝露が大きな影響を与えること、分化誘導時に限った添加であっても、最終分化した神経細胞におけるトランスクリプトームの異常として影響が残ることが判った。また、これらの変動は、転写のOn/Off状態が対照群と添加群の間で切り替わったかのような傾向を示した。発現変動遺伝子において、転写開始点周囲にCpGアイランドを持つ遺伝子が占める比率は、遺伝子総数における同様の比率よりも高かった。in silico解析により推定・抽出された遺伝子間ネットワーク中の"鍵"となる遺伝子群の発現変動を、定量RT-PCR法で確認する作業を進めている。
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