2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞分化のモデル培養系へのビスフェノールA曝露とエピジェネティック変異
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21510072
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
矢追 毅 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (40311914)
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Keywords | 内分泌かく乱物 / エピジェネティクス / 発生・分化 / 脳・神経 / 環境化学物質 / 環境エピジェネティクス |
Research Abstract |
神経前駆細胞から神経細胞への分化を追跡できるP19細胞をモデルとした本本研究を通じて、神経前駆細胞が神経細胞へと分化・成熟していく際に、BPAが及ぼす影響を、エピジェネティックスの視点からみた分子レベルの問題に還元し、神経系へのBPA 作用機構の解明に貢献することをめざす。未分化細胞時の倍加時間の延長や細胞死を惹起しないBPA添加濃度のもとで、未分化な細胞を培養し、神経細胞へと分化させた。この際、BPA添加の有無や添加期間の異なる4つの群、BPA添加時期の異なる3群(未分化時のみ、分化誘導時のみ、全培養期間)と無添加群(対照群)を設定した。得られた各群の神経細胞から抽出精製したRNAを用いて、神経細胞に最終分化した細胞のトランスクリプトームにBPA曝露が与える影響を、DNAマイクロアレイを用いて解析した。in silico解析により推定・抽出された遺伝子間ネットワーク中の“鍵”となる遺伝子群の発現変動を、定量RT-PCR 法で確認する作業を終えた。その結果、分化誘導時に限った添加であっても、最終分化した神経細胞におけるトランスクリプトームの異常として影響が残ること、分化誘導時のBPA曝露が大きな影響を与えることなどが最終的に確認された。これらの発現変動遺伝子群の大半は、胎生期BPA曝露により惹起されるDNAメチル化異常を見出した胎仔終脳においても[Yaoi T.,2008]、発現変動していた。このことは、本モデル系から得られた知見を個体レベルの解析に還元できることを示唆する。また、Dolinoy DCらがBPA曝露マウスでDNAメチル化異常を示すと報告した散在型反復配列IAPの5'UTRにおいて,CpG配列のメチル化状態を調べたところ、本培養系においても変動していることが判った。今回見いだした発現変動遺伝子の多くは、転写開始点周囲にCpGに富む配列を持つことから、最終分化した神経細胞におけるトランスクリプトームとの相関を明らかにするべく現在、DNAメチル化状態などの解析を進めている。
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