2010 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹・前駆細胞特異的シグナルによるAhRを介したベンゼンの造血毒性誘発機構
Project/Area Number |
21510074
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
井上 達 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, 客員研究員 (50100110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 容子 安全性生物試験研究センター, 毒性部, 室長 (30291115)
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Keywords | 芳香族炭化水素受容体(AhR) / 造血幹細胞 / 幹細胞ニッチ / 遺伝子発現変化 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
未分化な幹・前駆細胞レベルでのAhR特異的な対ベンゼン相互作用をより包括的に解明することを目的として研究を進め、以下の成果を得た。1)LKS(Lin'c-Kit^+Scal^+)分画でのベンゼンの作用:造血系においてAhRの発現が限局的に見られるLKS分画では、非分画骨髄細胞に比べてベンゼン暴露後24時間の非暴露対象群に比べた細胞数の減少率がより大きいことを見出した(LKS分画:55.8%;骨髄細胞:79.8%)。このLKS分画での酸化的ストレス状態をDCFH-DA蛍光色素の蛍光強度で測定したところ、ベンゼン非暴露群に比べて高輝度を示す分画は僅かに観察されるのみであり、Annexin V陽性細胞の増加も観察されなかった。さらに、LKS分画は、ベンゼン投与2時間後に非暴露群の56.0%まで既に減少していることが明らかとなり、障害を受けた細胞は、表面マーカー上LKS分画からは速やかに消失しているものと解釈された。2)AhRKOマウスのベンゼン毒性に対する不応性:これまでのデータに加え、骨髄の網赤血球を指標とした小核発生頻度も野生型の1/7に留まることを明らかとし、障害そのものが生じていないとするこれまでの仮説に合致する結果を得た。3)ベンゼン暴露28日後の発現遺伝子変動:発現が低下する分子として同定されたchd4 (chromodomain helicase DNA-binding protein 4)が、ベンゼン曝露直後には発現が増加していることが予備検討結果から示唆された。AhRとの関係は不明ながら、このものは造血幹・前駆細胞の維持、放射線障害修復やp53を介したp21のup-regulationによる細胞周期抑制、発現低下による腫瘍好発性等に関与するとされ、ベンゼン毒性機構の分子基盤の一翼を担う分子として注目される。
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