2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳発達への環境化学物質の影響を調べるための培養シナプス形成系と遺伝子発現解析
Project/Area Number |
21510075
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Research Institution | 財団法人東京都医学総合研究所 |
Principal Investigator |
黒田 純子 (木村 純子) 財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (20142151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 仁 財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (20161341)
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Keywords | 環境化学物質 / 脳・神経 / 脳発達 / 神経毒性 / シナプス形成 / 培養神経細胞 / 農薬ネオニコチノイド |
Research Abstract |
今年度は農薬ネオニコチノイドの哺乳類への影響について主に研究を進めた。農薬ネオニコチノイドは昆虫への毒性が高く、哺乳類やヒトには安全といううたい文句で多量に使用されているが、哺乳類への影響について研究報告は少ない。ネオニコチノイドの標的であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、人では末梢神経、自律神経、中枢神経で重要であるだけでなく、免疫系などでも生理機能を果たしていることが近年分かってきた。さらに脳の発達過程でもnAChRは多量に発現し、正常な神経回路形成に関与していることもわかってきた。そこで我々は、ネオニコチノイド系農薬イミダクロプリド、アセタミプリドをラット小脳神経細胞培養に投与し、その反応を神経活動のメルクマールとなる細胞内カルシウムの動態から調べ、ニコチンと比較した。培養小脳神経細胞は、化学物質の神経細胞発達への影響を調べる良いモデル系である。その結果、2種のネオニコチノイドとニコチンは1μM以上で小脳神経細胞に興奮性アゴニスト作用を起こし、その作用はニコチン性受容体の特異的アンタゴニストで阻害された。ネオニコチノイドによる反応性はニコチンに比べると低い傾向であったが、これまで報告されている結合実験の結果よりも、よりニコチンに近い反応を起こした。以上より、ネオニコチノイド類はヒトを含む哺乳類へ、特に発達期の脳へ、ニコチン様の悪影響を及ぼすことが示唆された。この研究は国際オンラインジャーナルPLoS ONEに2012年2月末に掲載され報告済みである。また2011年末、臨床環境医学会のシンポジウムでネオニコチノイド系農薬の哺乳類への影響について招待講演を行った。さらに、ネオニコチノイド系農薬やその他の環境化学物質による、RT-PCRを用いたシナプス形成系における遺伝子発現への影響については、実験を続行中であり、至急研究成果をまとめる予定である。
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