Research Abstract |
本研究は,ダブルデッカー錯体の回転の可視化と制御により分子機械の基礎を確立することを目的としている.ダブルデッカー錯体は中心金属をポルフィリン環やフタロシアニン環がはさみこんだ構造をしており,ダブルデッカーポルフィリン錯体については,溶液中で2つの環が互いに回転することが明らかにされていた.従って,分子レベルのローターとして分子マシンの部品としての利用が期待される.従来,2つの環の回転は,溶液中でのみ議論されてきた.ここでは,基板上で,分子一つのレベルで,ダブルデッカー錯体の回転を訂視化することを試みた.一方のポルフィリン環上に置換基を1つもつダブルデッカーセリウム錯体を合成し,基板上に配列させ,走査トンネル顕微鏡観察を行った.置換基の位置が走査トンネル顕微鏡でわかるので,分子の向きを観察することができることがわかり,さらに,時間が経つと分子の向きが変化することが見つかった.このように我々は,ダブルデッカー錯体の回転を初めて直接観察することに成功した.さらに,錯体の環境によって,分子の向きや回転頻度が影響を受けることも明らかにし,それぞれの環境における回転頻度を求めた.また,フタロシアニン環を含むダブルデッカー錯体については,溶液中でさえ回転するかどうか明らかにされていなかった.二置換ポルフィリンとフタロシアニンのダブルデッカーセリウム錯体を合成し,溶液中で回転するということを初めて明らかにし,回転速度を求めた.さらに,基板上でも回転を反映した走査トンネル顕微鏡観察結果を得た.
|