2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510117
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白鳥 世明 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00222042)
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Keywords | 交互吸着法 / 反射防止膜 / モスアイ構造 / 屈折率 |
Research Abstract |
近年、太陽電池や液晶パネルなどの光学デバイスへの応用を目的とした反射防止膜の需要が伸び、開発が盛んに行われている。一般的な反射防止膜とは、低屈折率層と高屈折率層を重ね合わせ、膜厚や屈折率を制御することで特定可視光波長の反射を防止するものである。一方、蛾の目に観察されるような、上層から下層にかけて徐々に屈折率が増加している傾斜屈折率構造が注目を集めている。この構造を持つ膜は、広い可視光波長域を反射防止するため、反射防止膜としての理想型とされる。こうした傾斜屈折率構造の作製方法に関しては、既に数多く報告されている。しかし、エッジングやスピンコート等による作製方法ばかりで、大面積化が難しかったり有害な有機溶媒を用いていたりと実用化に難があった。そこで、本研究では交互吸着法と呼ばれる手法を用いて傾斜屈折率構造の作製を試みた。交互吸着法とは、カチオン性高分子とアニオン性高分子を交互に積層させて高分子多層膜を作成する手法であり、容易に大面積化が可能で、常温・常圧下で膜厚・構造をナノメートルオーダーで制御できるという優位性がある。本研究では、カチオン性高分子としてPoly(allylamine hydrochloride)(以下PAH)を、アニオン性高分子としてPoly(acrylic acid)(以下PAA)とPoly(vinyl alcohol)(PVA)を用いた。まず、PAHに少量のPAAとPVAを混合した水溶液と、PAAとPVAの混合水溶液を用意した。そして、ガラス基板をそれぞれの混合溶液に交互に浸漬させ、11層の多層膜を作成した。その結果、3Dネットワーク状の傾斜屈折率構造が得られ、波長域650nm~850nmにおいて透過率96%を示した(ガラス基板のみでは透過率92%)。今後は、更なる透過率の向上と、大面積化に取り組む予定である。
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