2011 Fiscal Year Annual Research Report
環状暗視野像を使った極微小領域結晶構造解析手法の研究
Project/Area Number |
21510121
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木本 浩司 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, ユニット長 (90354399)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 結晶構造 |
Research Abstract |
近年の先端材料の特異な物性や優れた特性は、極微小領域の結晶構造に依存する。そのため、電子顕微鏡による微小領域の結晶構造解析は、先端材料開発の基盤技術である。近年注目されている走査透過電子顕微鏡法(STEM)を用いた環状暗視野(ADF)像観察(STEM-ADF)法は、構造直視性に優れ元素識別能が高いという特長を持つ。その本質は、「計測結果が装置関数と物体関数とのconvolutionで表される」という非可干渉結像性に集約される。著者は同じconvolutionで表されるEELSについて独自のソフトウエアを開発してきたが、本研究課題ではそれらを改良し結晶構造解析手法を開発することを目指している。 本年度は、STEM装置を使い入射電子を走査しながら、回折図形を取得する新しい像観察手法(著者らはspatially-resolved diffractometryと呼ぶ)により、さらにSTEMの像観察を高度化することを試みた。従来の環状検出器や円形検出器ではなく、回折図形を2次元データとして取得し、得られた4次元データを計測後に解析することで、原理的には全てのSTEM画像を一度に検出できる。我々は4次元データを散乱角依存性や回転角依存性に変換するソフトウエアなども独自に開発し、STEM像の形成メカニズムの解明を試みた。その結果、暗視野像を環状に検出しなくても非可干渉性結像が実現できることを実験的に初めて示すことができた。さらに高角散乱電子の Rutherford scattering的な振る舞いを初めて明らかにした。本研究の成果は国際学会や国内学会の招待講演や、解説記事の執筆(印刷中)、顕微鏡に関する欧文誌に掲載された。また従来から申請中だったSTEMの軸調整に関する特許が認可された。
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