Research Abstract |
列車ダイヤに乱れが生じた時には,それを正常に戻すための一連の列車ダイヤの変更(運転整理)が行われる。現状では,運転整理はすべて人手で行なわれており,そのために,運転整理を自動的に行なうアルゴリズムが望まれている。しかし,これまでの研究には,(1) 利用者の視点からの評価となっていない,(2) 鉄道ネットワーク全体に対する考慮がなされていない,(3) 車両や乗務員などリソースの条件が考慮されていないという問題がある。 これに対して,本年度は,次のような研究を行なった。 ・ 現実の長期間にわたる列車運行実績データに対して,クロマティックダイヤ図,3次元ダイヤ図等の形式で可視化するツールを完成させ,ダイヤ乱れの発生や伝播の傾向の分析を行なった。 ・ 利用者の視点からの運転整理を行なうアルゴリズムとして,列車に遅延が生じた時の接続判断を自動的に行なうアルゴリズムを開発した。これは,与えられた運転整理案が実施された時に個々の利用者がどの列車を利用するであろうかをシミュレーションによって推定し,利用者の不満足(不効用値)の総和を最小にする接続案をタブーサーチによって導出する。 ・ 上記アルゴリズムにおいて,過去に探索した結果を再利用する手法を考案し,処理速度の向上を図った。実データを用いた検証の結果,さらなる高速化は必要であるが,ほぼ実用的な速度で動作することを確認した。 ・ 列車,車両,乗務員をエージェントとみなし,それらが協調して運転整理案を作成するアルゴリズムを作成した。小規模なモデルダイヤに適用し,良好に動作することを確認した。 ・ 鉄道ネットワーク全体に対する運転整理案の評価を行なうことを目的として,振替輸送に着目し,Queuing Flow Networkと称する新規のモデルを考案して,複数の路線上での数万人規模の利用者を実用的な速度でシミュレートするプログラムを作成した。実路線のデータに対して,良好に動作することを確認した。
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