Research Abstract |
本研究では,橋梁やトンネル,電力設備などのインフラストラクチャの温度,応力,塩分濃度など,システムの安全を特徴づける物理・化学量をリモートで多点計測するために,無電源ワイヤレスセンサー((PW(passive wireless)センサー)を開発している.平成22年度は下記の研究を実施した. 温度測定のためにコンデンサーの静電容量が温度に依存して変化する性質を用いる方式の有効性を検証するために,静電容量変化に伴いPWセンサー回路のインピーダンス整合が崩れたときに生じる反射波の振幅変化を評価しなければならない.この定量評価のために回路とアンテナの結合を考慮した時間領域差分(FDTD)法による解析コードを作成した.この結果,電磁波の周期に比べて回路の時定数が長い場合,解析に膨大な時間を要するため,実質的に解析が難しいことがわかった.この問題を解決するために,回路の時定数を実効的に短くして,定常状態への収束を加速する方法を新たに開発し,その有効性を確認した,この成果は論文として国際学術雑誌に投稿中である.また,この高速解法を用いて,金属面に貼り付けが可能なPWセンサーのためのパッチアンテナの設計最適化を行った.この成果はH23年度に開催される国際学会で発表する予定である.さらに,PWセンサーは電線や橋梁等に貼り付けることが想定されるため,アンテナの面積を小さくする必要がある.このため,新たにスパイラル状のアンテナ形状を導入し,格段の小型化を可能とした.この成果は,国際学術雑誌に掲載予定である.静電容量変化による反射波の振幅変化については,上で述べた高速解析法を用いてH23年度に解析する予定である.
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