Research Abstract |
平成22年度の研究実施項目は,(1)海岸域の黒松の倒伏,抜根や折損被害の基準の継続的検討,(2)平成21年度に開発した純林に対する数値解析法の混交林や複層林への拡張,(3)開発した数値解析法の有用性を検証するための水理実験の継続,(4)開発した数値解析法による植生域(植生がない場合を含む)を氾濫する津波のパラメタスタディの実施と純林,混交林,複層林の利用指針の検討,(5)静岡海岸での黒松の実態調査の5つである. (1)については文献のレビューばかりでなく,2011年東北地方太平洋沖地震津波を受けて,実データに基づく黒松の被害形態と胸高直径,推定抗力(モーメント)の関係を検討した. (2)については,複層林を対象に,暫定的な樹冠部のモデル化と被害基準の組込により,津波減勢効果の定量的な評価法(数値解析法)の開発を試みた.しかし,いまだに計算精度が問題として残された.海岸林の維持・管理を考えた場合,複層林が現実的であり,複層林に対する精度よい津波減勢効果の評価法は是非とも必要である. (3)については,暫定的な海岸林模型(相似則を考慮した低木と高木の模型)を用いて,数値解析法の精度検証ばかりでなく,海岸林域の津波氾濫現象の把握を目的として,水理実験を継続した.純林はPattern 1(低木のみ)とPattern 2(高木のみ)の2通り,複層林はPattern 3(低木+高木)とPattern 4(高木+低木)の2通りに対して水理実験を実施した.これらの実験を通して,海側の樹木には衝撃力が働き得ることを確認した. (4)については,簡単な海底と陸上地形下での海岸林(純林)の生長による津波減勢効果の変化について検討した. (5)については,静岡県浜松市,磐田市,袋井市,掛川市の海岸で実態調査(胸高直径,樹高,樹木間隔,純林・混交林・複層林の別など)を実施した.
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