2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾による5'-endトランスクリプトームとDNAメチル化の変化
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21510202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 真一 The University of Tokyo, 新領域創成科学研究科, 特任准教授 (00313099)
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Keywords | 遺伝子発現 / DNAメチル化 / 脱アセチル化阻害剤 / 次世代超高速DNAシーケンサー / エピジェネティクス / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
種々の遺伝子の発現にエピジェネティックな作用が関与していることが明らかになってきた。特に癌の発生や進展にDNAのメチル化やヒストンの脱アセチル化などのエピジェネティックな異常が関与していると考えられている。しかしながらDNAのメチル化、ヒストン修飾などのエピジェネティックな作用が、転写開始点およびその発現量にどのような影響をおよぼすか検討した報告は非常に少なくその詳細は明らかでない。そこで大規模並列処理配列決定法による次世代シークエンサーを利用しゲノムワイドなメチル化測定法を確立すると共にすでに開発が終了している5'-end測定法を用いてエピジェネティックな作用が発現様式にどのような影響与えるかを検討した。 今年度は、脱アセチル化阻害剤(TSA)処理した大腸癌細胞株HT-29からmRNAを単離し、5'end-SOLiD法を用いて検討した。SOLiDステムを用いて約3,600万個の5'end tagをシーケンスし、その中でゲノムにヒットしたより正確と考えられる配列約2,000万個の5'end tagを得た。これらの結果を従来のサンガー法のシークエンンシングを用いる5'SAGE法と比較したところ差が2倍以上且つp値が0.001以下であった遺伝子は5'SAGE法で81個検出されたのに対してSOLiDを用いた方法では2426個の差のあった遺伝子が観察された。これらの変化のあった遺伝子の中にはDNAのメチル化に関するものが多く含まれていた。TSA刺激は、DNAのmethylatransferase(DNMT1、DNMT3A)、メチル化CpG結合ドメイン(MBD2、MBD3、MBD6)タンパク質MeCP2などCpGアイランドのメチル化に関与する遺伝子の発現を減少させた。また、転写調節に関与するhigh-mobilityタンパク質グループ、HMGA1,HMGA2、HMGB1,HMGB2の発現も抑制した。このことからTSAによる遺伝子の発現変化の一部にDNAのメチル化が関与する可能性が示唆された。一方、これらのDNAメチル化を測定するためにDNAメチル化感受性制限酵素によるゲノムワイドなDNAメチル化測定法を検討した。
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