2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規有糸分裂阻害天然物ニグリカノシド類の立体構造と活性の解明を指向する合成展開
Project/Area Number |
21510218
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 憲秀 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20222268)
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Keywords | グリセロ糖脂質 / 立体構造解明 / ニグリカノシAジメチルエステル / 立体選択的合成 / 全合成 / エーテル結合性脂質 / 酸化脂質 / 有糸分裂阻害剤 |
Research Abstract |
ドミニカ産の緑藻アブレインビレア・ニグリカンスから単離された化合物ニグリカノシドAのジメチルエステルは、抗癌剤タキソールと同様の有糸分裂阻害に基づく強力な癌細胞増殖抑制作用を示す(IC50~3nM)。これは、炭素数20と16の2本の不飽和脂肪酸鎖とガラクトグリセロールがエーテルでクロスリンクした、新規で特異な化学構造を持つので、既存の抗癌剤に耐性を示す癌にも有効な新規抗癌剤のリードとして強く期待される。一方、これは藻からの産生量が少ないため(1.5~3.0×10-6%wet wt)、その供給法の開発が課題になっている。また、これは、生物活性の詳細を研究する上で必須な立体化学が未解明なので、その究明も不可欠な課題となっている。申請者は、ニグリカノシドAジメチルエステルの物質供給と絶対立体配置決定を担う全合成を目的に研究を企画し、展開した。 平成23年度は、炭素数20と16の2本の脂肪酸鎖のエーテルクロスリンク部分(C11'-0-C10)の構築を検討した。当初、アイルランドクライゼン転位を用いてこの部分を立体選択的に構築しようとしたが、エノールエーテル・ケテンシリルアセタール構造の基質調製が困難であるため、断念した。一方、エバンス型不斉補助基を利用したアミドエノラートによるアルドール反応がこの系では高立体選択的に進行することを見出し、これを利用してエーテルクロスリンク部を単一ジアステレオマーとして構築することに成功した。不斉補助基のエナンチオマーを用いることにより立体異性体の合成にも適用できるので、この方法は天然物の立体化学決定に向けた比較用の標準サンプルの系統的調製に役立つ。さらに、ジュリアオレフィン化を経由したC20脂肪酸鎖の全長の構築に向け、エーテルクロスリンク部の隣接位置に1-フェニルテトラゾル-5-イルスルホニル基を導入することにも成功した。
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