Research Abstract |
ハテルマライド類,およびビセライド類は沖縄産海綿またはホヤより細胞毒性物質として単離された一連のマクロライド群であり,これらの化合物の中でもハテルマライドNA,NAメチルエステルおよびビセライドA,Bは腫瘍細胞の増殖を市販の抗癌剤であるシスプラチンよりも強力に阻害することが報告されている.しかしながら生物であるブラインシュリンプに対して毒性を殆ど示さないことから,副作用の少ない新しいタイプの抗癌剤のリード化合物として期待されている.これまでに申請者はハテルマライドNA,Bの全合成を達成し,その合成経路を基盤として人工類縁体の設計・合成を行い,生物活性評価を検討した.その結果,ハテルマライド類の強い細胞毒性には,エステル部分を改変しても細胞毒性には影響せず,マクロラクトン環と側鎖部分の組み合わせが重要であることを見出した.本年度は,構造活性相関の一環としてビセライドA,B,Eの合成を実施した.昨年度確立した酵素による位置選択的加水分解を鍵反応として,C20位に酸素官能基を導入し,ビセライドA,B,Eの合成を進めた.その結果,ビセライドA,Bに関しては,全合成を達成したハテルマライド類の重要中間体の等価体までの合成法を確立することができた.あとはハテルマライド類と同じ手法により4工程で全合成を達成できる.ビセライドEに関しては,全炭素鎖を構築することができた.現在最終工程であるTBDPSオキシ基の脱離反応による,ビセライドE特有め6員環共役ラクトン部分の構築を検討している.全合成達成後,細胞毒性を評価し,ハテルマライド類の活性と詳細に比較する予定である.
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