2011 Fiscal Year Annual Research Report
メチル化アルギニンを介した母胎間ケミカルコミュニケーションの解析
Project/Area Number |
21510222
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加香 孝一郎 筑波大学, 生命環境系, 講師 (60311594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 純治 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30323257)
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Keywords | メチル化アルギニン / 高感度定量分析法 / ケミカルコミュニケーション / 質量分析法 / タンパク質アルギニンメチル化酵素 / 一酸化窒素合成酵素 |
Research Abstract |
1.蛍光標識を用いたヒスタミン定量法の確立 ヒスタミン脱炭酸酵素(HDC)は、肥満細胞や好中球のみならず、Tリンパ球やマクロファージをはじめとする、多くの細胞や組織において発現が見られ、各種薬剤を用いた刺激によりその発現が誘導されることが知られている。ヒトTリンパ細胞株由来Jurkat細胞においても、ボルボールエステル(TPA)処理によるHDCタンパク質の誘導が報告されているが、HDC誘導条件下におけるヒスタミン産生量を直接測定した報告はない。そこで前年度確立した、特異的かつ鋭敏なメチル化アルギニンの高感度定量法の応用として、Jurkat細胞における細胞内ヒスタミン生成量の変化を前述の定量法を用いて解析した結果、HDCの発現誘導に伴って劇的にヒスタミン産生量が増加することを明らかにした(Mol. Med. dRep.in press.)。 2.官能基に着目した生体低分子探索法の確立 恒常性の維持に関わる生体低分子は、一般にその特徴的構造として官能基を有し、この官能基を介して生理活性の発現に関わる場合が多い。そこで我々は、生体内に存在する多くの生体低分子がこの官能基を持っていることに着目し、官能基の性質を指標に、ヒト妊娠高血圧のモデルマウスを材料として、病態時に量的変動を示す生体低分子探索法の確立を試みた。そこで官能基の中でもアミノ基特異的な蛍光標識法を用いて、野生型とPAHマウスにおけるアミノ基を有する分子群の量を超高速液体クロマトグラフィーにより比較したところ、病態時に胎仔臓器中で約2倍増加しているアミノ基含有化合物(アミン)を検出した。本物質の母体への影響を検討した結果、本物質は妊娠時における血圧の恒常性維持を反映する生体低分子である可能性、及び母体で生成した本物質が胎仔に移行している可能性が示唆された(未発表データ)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つであった『タンパク質のメチル化からメチル化アルギニンの代謝に至る素過程の解明』として、線虫を用いたタンパク質メチル化による生物学的意義の詳細な解析、並びにタンパク質分解経路を介したメチル化アルギニン生成機構を明らかにできた。さらに、もう一つの目的である『母胎間のケミカルコミュニケーションの解明』として、昨年度メチル化アルギニンに関連して同定したアミンが胎児から母体へ移行することを明らかにした(未発表データ)が、さらに病態に関連して母体から胎児へ移行する第2のアミンを検出した。現在その構造と機能を解析中だが、当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)遊離メチルアルギニンの生成・代謝メカニズムと妊娠高血圧病態との関連について更に研究を進める。 (2)前記第1のアミンの胎児→母体移行の生物学的意義と、妊娠高血圧症における病態発症との関連について、生合成酵素の遺伝子破壊マウスを用いた個体レベルでの解析を進める。特にレニン-アンジオテンシン系が亢進している本疾患モデルマウスにおいて、その特徴的な病態の発現機構を明らかにする。 (3)母体→胎児移行が確認された前記第2のアミンの単離と同定を行う。さらに本物質の病態時における母体→胎児移行の生物学的意義の解明と、本疾患モデルマウスに対する薬理的効果について検討する。
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Research Products
(7 results)