2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510236
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤原 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (10354888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 俊郎 独立行政法人理化学研究所, 構造生理学研究グループ, チームリーダー (20321739)
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Keywords | 心筋症 / 筋収縮調節 / トロポニン / X線小角散乱 / X線結晶解 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
重篤な難治性疾患の一つである遺伝性肥大型心筋症は、その発症原因として種々の蛋白質変異が知られている。我々は、それらの変異のうち、筋収縮調節蛋白質トロポニンの変異、特にトロポニンを構成する蛋白質成分の一つトロポニンT(TnT)の変異(E244D(TnT)及びK247R(TnT))によるトロポニンの機能異常の分子機構の解明を目指している。 平成23年度は、TnT野生体およびこれらのTnT変異体のいずれかを含むトロポニンのX線小角散乱曲線の解析を、野生体トロポニンの結晶解析による構造モデルに基づいた遺伝的アルゴリズムによる構造サーチの手法を用いて行った。この手法により、実験的な散乱曲線と一致するトロポニンの構造の分布が得られる。野生体、変異体それぞれの散乱曲線から得られた構造の分布から、変異により、とり得る構造の分布が変化することを明らかにした。また、野生体およびこれらの変異体のX線結晶構造解析を行った結果、野生体と変異体の違いは、変異部位付近の局所的な水素結合ネットワークの違いであることを示した。さらに、トロポニン野生体およびK247R(TnT)を含むトロポニンについて中性子非弾性散乱実験を行った。その結果、変異体を含むトロポニンの方が柔らかいことを示唆する結果を得た。これら一連の結果は、変異による水素結合ネットワークの変化が構造を不安定化し、それがトロポニンの柔らかさの増大をもたらし、トロポニンの取り得る構造分布の変化につながることを示唆している。変異体がトロポニンの機能異常を示すことを考えると、これらの結果は、トロポニンの機能発現における蛋白質の柔らかさの重要性を示唆している。現在、得られた結果についての論文投稿準備中である。
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