2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510239
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小松 康雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (30271670)
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Keywords | 架橋 / DNA / 疎水的相互作用 / アミノオキシ / 連結 |
Research Abstract |
1.架橋構造の同定 昨年度までに開発したDNA架橋化試薬によって架橋化DNA中に形成される架橋部位の構造を決定する実験を初めに行った。架橋化DNAを作製後、2種類の核酸分解酵素(Nuclease P1,snake venom phosphodiesterase)によって完全分解し、逆相HPLCによって分析したところ、架橋化試薬が結合したピークが溶出された。この核酸以外の未知ピークを解析した結果、2分子のデオキシリボースが1分子の架橋化試薬に結合した構造であることを明らかにした。また、この架橋部位には試薬と糖との共有結合の様式に応じて3種類の幾何異性体が存在することを見出した。この結果は、2つのアミノオキシ基を有する架橋化試薬が、2本鎖DNA中の2つの脱塩基部位と期待した通りの結合を形成していることを示している。加えて、架橋化部位の構造はcis,transのいずれかが優先的にDNA中で形成されず、両方の構造が形成されることを示している。またこの架橋部位は還元によって1種類の構造に変換できることも見出した。 2.架橋化DNAの安定性の評価 架橋化DNAの化学的安定性を調べるため、pH4,pH7,pH9の緩衝溶液中で架橋化DNAを加温した。その結果、中性条件下では90℃でも架橋化DNAは安定であったが、pH4とpH9で90℃に加熱した場合には架橋部位においてDNA鎖の切断が見られることが明らかになった。 3.新規架橋化試薬の合成 架橋部位を還元して1種類の構造に収束するには、酸性条件や高濃度の還元剤などの過酷な反応条件が必要であった。そこで、より緩和な条件によって還元することを目的に、アミノオキシにメチル基を付加した新たな架橋化試薬を合成した。この新しい架橋化試薬によってDNAの架橋化反応を行ったところ、メチル基を付加することで架橋化効率が著しく低下することが明らかになった。しかしながら、架橋部位の還元反応は、より高いpHでも進行することも確認した。
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