2010 Fiscal Year Annual Research Report
市民調査との協働による西日本の雑種タンポポの現状と変遷の研究
Project/Area Number |
21510243
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40274344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70326247)
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Keywords | タンポポ / 移入種 / 保全 / 雑種 / 遺伝子汚染 / 外来生物 / 遺伝子解析 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
1. 西日本における雑種タンポポの分布状況の把握:「タンポポ調査・西日本2010」で西日本19府県から採取された果実を使い、形態からセイヨウタンポポとされた2,063個体、アカミタンポポとされた912個体について、葉緑体DNA解析により雑種判定を行った。その結果、セイヨウタンポポとされた個体の62.9%、アカミタンポポとされた個体の31.3%が雑種であった。これのデータを用いて雑種比率の空間分布を解析した結果、雑種比率が地域によって大きく異なることが確かめられた。在来の二倍体有性生殖種の分布が見れらない四国南部、山陰、九州北部にも雑種比率の高い地域があったことから、地域内での雑種形成率の高さより、雑種形成後の移動過程が現在の雑種比率の空間分布を大きく規定しているものと思われた。 2. マイクロサテライトによる雑種の遺伝的多様性の解析:昨年度選抜した8種のマイクロサテライトマーカーを用いて、大阪府南部の緑地公園内の雑種タンポポ239個体の遺伝的多様性を解析した。その結果、192種類の遺伝子型が見つかり、同じ遺伝子型を示す個体は最大でも8個体しかなく、1個体のみの遺伝子型が183種類あった。雑種タンポポが無融合生殖で種子を生産していることを考えると、観察された遺伝的多様性はかなり高いといえる、また、三倍体雑種と四倍体雑種の間で遺伝的多様性に大きな差は見られず、四倍体雑種33個体でも31種の遺伝子型が見られた。調査地には在来二倍体で有性生殖をするカンサイタンポポが多く残っていることから、公園内での戻し交雑を含む雑種形成が遺伝的多様性の高くしているのかもしれない。今後、在来二倍体タンポポの生育していない場所でも遺伝的多様性を調べ、両者を比較することで、雑種形成が遺伝的多様性の創出に関係しているかどうかを詳しく検討していく必要がある。
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