2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510254
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 和 Yamagata University, 人文学部, 教授 (50238094)
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Keywords | ユーロリージョン / シェンゲン条約 / 地域統合 / 越境地域協力 / 移民政策 / 労働移動 / 近隣諸国政策 / 国境管理 |
Research Abstract |
本研究は、EUの越境地域協力(CBC)の制度化の進展のなかで、EUの域内外にまたがる地域におけるヒトの移動に関する制度がどのように確立するかを明らかにすることを目的としている。CBCは、2004年以降、旧東欧諸国のEU加盟を契機にEUの域外にも拡大していき、その拡大と相俟って、CBCの制度化は進み、EUの域外地域を対象とする近隣諸国政策などにおいてもCBCの制度が取り入れられた。CBCは、一定の地域内において国境を跨ぐ移動を促進しようとするものであり、国境線の相対化を可視化するものでもあった。しかし、2007年から、シェンゲン・システムがチェコやポーランドなど旧東欧諸国に拡大されたことにより、これらの諸国の国境地域では、国境管理を厳格化しようとする動きとCBCによってヒトの移動を自由にしようとする動きが同時に起こってくる。こうした相対する動きに対して、CBCはどのように制度を整えていくのであろうか。 平成21年度の研究は、EUの域内地域としてチェコ-独国境のCBCにおける国境管理状況とブルガリアーセルビア国境における国境管理の状況について調査を行った。明らかになったことは、制度と実態の乖離状況である。不法移民を警戒するEUでは、名目的な国境管理は行われていないにもかかわらず、各国の警察による「予防的」な警備活動が強化されていること、他方、EUの域外地域とのCBCでは、国境管理は制度としてはビザなしで滞在できる期間を延長するなどの措置によって、移動を促進する方向の政策がとられているが、国境警備そのものは厳しくなっており、日常的な移動は一般的とはいえない状況になっている。したがって、EUの域内地域においても、域内外地域においてもシェンゲン・システムの排他性がCBCを実質的に阻害しているといえるであろう。
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