2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510254
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 和 山形大学, 人文学部, 教授 (50238094)
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Keywords | ユーロリージョン / 移民政策 / 越境地域協力 / シェンゲン条約 / 欧州統合 / INTRERREG / 近隣諸国政策 / 労働移動 |
Research Abstract |
本研究は、EUの越境地域協力(CBC)の制度化の進展のなかで、EUの域内外に跨る地域における人の移動に関する制度がどのように確立されるかを明らかにすることを目的としている。越境地域協力、とりわけミクロレベルの協力(CBC)、およびその協力体であるユーロリージョンは、ヨーロッパ統合と軌を一にして進展し、EU域内外の地域においても人の移動を活発化させていた。一方、人の移動の流動化は「自由・安全・正義」の領域の確立をめざすEUの政策、とりわけシェンゲン条約による国境管理を強化することになり、EUは矛盾した政策を同時に進行させることになった。こうした状況を踏まえて、平成22年度の研究では、EUの制度設計のなかでヒトの移動がどのように制度化きたのかという観点から分析を行い、シェンゲン条約が強化される背景とその要因、さらにシェンゲン圏が東中欧地域に拡大したことによって、EU域外地域と越境地域協力を行っているユーロリージョンにおいてどのような障害が現れるかという点を分析した。 研究成果としては、シェンゲン条約の強化は、シェンゲン圏が東方に拡大することに伴って「不法」移民を阻止することが目的であり、CBCに関しては例外措置を設けて、規制緩和を図っていること、他方こうしたシェンゲン条約の強化は、あくまでEUの東方・南方地域を対象とするものであり、選別的対応であることも明らかになった。さらに、国境管理の強化は、国境管理という国家の権限に関わる問題を地域で対処しなければならないこと、またシェンゲン条約の規定を地域住民に限定して緩和する措置には、生態認証や様々な個人情報がEUレベルで共有することが条件となっているという個人レベルの問題も生じさせており、国家間の信頼醸成を補完するものとして進められた越境地域協力が、国家の論理に翻弄されるという状況を生み出しているということができる。
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